第7話 一つ年上の清楚で美人な先輩
「
「んっ……っ」
目を覚ますと目の前には見たことのない綺麗な女子が立っていた。
長くさらさらで綺麗な髪に非の打ち所がない顔。そして黒いセーターの下はスカートと黒タイツを履いている。
すると彼女はカウンターの横に引っかかった鍵を取りに行ってまた戻ってきた。
「もうここ閉館するから外に出よっか」
「あ、はい! すみません」
喋り方とネクタイの色から上級生だということがわかる。
図書室の長机に伏せて寝ていた俺は大きく
すると後ろから俺の肩をポンと叩いてくる感触。なんだろうと振り返ってみると、さっきの美人なお姉さんが指で俺の頬をクイッと押す。
「幸太くん。引っかかったね」
「……すごいベタなことするんですね。ていうかなんで俺の名前知ってるんですか?」
そう聞くと彼女はニヤッと笑って答える。
「お姉さんは何でも知ってるんですよ? 幸太くんが箱入り社長息子だってことも」
「俺、箱入りではないんですけど……」
「あれ? 私のウキウキペディアの不具合かな?」
「なんですかそれ……」
それからも下駄箱まで着いてくるこの人は、二年生専用の下駄箱の方に行った。
やはり俺よりも年が一つ上の先輩のようだ。
でもなんで俺の名前を知っているのだろうか。凄く気になる。
そんなことを考えながら校門まで歩いて行くと、先輩は先に門を出て俺を待ち伏せしていた。
「あの俺、先輩のこと何も知らないんですけど」
「まぁ、そーだろうね。全く接点ないし」
「ならなんで……」
「じゃあ、後輩くんには特別に下の名前で呼ばせてあげます!」
「えぇ!? いや遠慮しときますね」
「もぉ! 幸太くんは案外イケズな人なんですねー」
何事もなかったかのように話を変えられてしまった。
見た目は凄く清楚で綺麗な人なのになんだか絡みづらい先輩。
すると先輩は突然、俺の腕にギュッとくっついてくる。
「あの、すごく恥ずかしいので離してもらえないですか?」
「なんでですか?」
「だから恥ずかしいので……」
言っても離す気配のない先輩。俺からしたら結構な羞恥プレーなのだが……。
――門を離れて学校から家までの中間にある交差点に差し掛かると彼女は俺の腕を離した。
すると先輩はニコッと笑って俺の手を握る。
「私の名前は
そう言うと美人な先輩は小さく手を振って赤に変わりそうな横断歩道をそそくさと渡って行った。
今日はいつもよりも楽しい下校にはなったかな……。
ただ図書室で寝ていただけなのに知らない女性に話しかけられ、途中まで二人で下校。これはお嫁さんのいる俺にとってセーフだったのだろうか。
まぁ、お試しだから大丈夫だよな……。
――家に帰るとまだ部屋に綾間さんの姿はない。
学校帰りに買い出しにでも行ってくれているのだろう。
元人気アイドルにその辺のスーパー買い物をさせるのは背徳感がすごい……。
綾間さんと暮らし始めてから身の回りのことが凄くラクになったことにはとても感謝しているのだけど。
二階に上がって自分の部屋で制服を脱ぐ。するとポケットから小さな色紙が落ちた。
開いてみるとそこには丁寧な文字で『また図書室来てくださいね♡』と書いてある。
多分俺にくっついている時に穂花先輩が忍ばせたのだろう。
またベタなことを……。
俺はそのメッセージが書かれた色紙を大事に引き出しにしまった。
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