第2話 落とし主は可愛い美少女だった。
『わぁー優香ちゃん! その消しゴム超かわいー!』
『ほんとだーー!』
父さんからの電話を受けた翌日。
今日も何かと騒がしい教室の隅で、俺と親友の
陽太は小学生の頃からの仲で、心は優しい男子なんだが顔がぱっとしないので俺と同じく全くモテない。というか年齢=彼女なしなので女子とどう接したらいいのか全くわからない。
もしかしたら彼女が一人もできないまま棺桶に入れられる可能性だって無きにしも非ずなのだ。
「うわあー! SRの
「陽太、お前。声がでか過ぎだ……」
こっちをゴミを見るような目で見てくる女子の視線が痛い。
「だってぇ、三十連してやっと出てきたキャラだからよぉー。むふふっ、可愛すぎだろ」
「マジで気持ち悪い」
なんで俺はこんなデリカシーのない奴と友達やってんだろ……。
こいつと俺がモテない理由がなんとなくわかった気がする。
多分、陽太のセクハラ発言の声がでか過ぎて隣にいる俺までもが伝染しキモがられてしまうせいだろう。
「なぁ、お前知ってるか? この間アイドルを引退した
「流石二次元と三次元のハイブリットオタクだな。俺はもう三次元に興味ないからどーでもいいわっ」
「二次元しか愛せないオタク……気持ちわるっ!」
「お前に言われたくないんだが?!」
綾間凪咲。『MIXトラップ』という大人気アイドルグループの中心的メンバーで、最近ではバラエティやCMにも引っ張りだこの美少女アイドルだ。
グループの中でもズバ抜けて可愛く人気も高い。
そんな国民的人気アイドルがなぜ、一年という短い期間で一人だけ引退を発表したのか少し気になる。
「なぁ陽太。なんで綾間凪咲はこんなに早くに引退発表したんだと思う?」
「ん〜。家の事情とか? もしかしたら婚約者がいてーとか」
「お前はラノベの読みすぎだ」
「あぁーあ。俺も国宝級美少女とラブコメ展開してぇーー!」
「陽太、お前は少し黙れ」
またしても氷のような表情をした女子の視線が痛い。
◆
――ホームルームが終わって一人で教室を出る。陽太は美術部と弓道部の活動があって一緒には帰れないので、俺は先に下校することにした。
いつもこの時間帯に見る変わらない風景。
家は学校と1キロ程しか離れていないので歩いて帰れる距離。親は腐る程に金を持っているのだけれど、今は一人暮らしをしているので自分の力で生きて行かないといけないのだ。
なるべく体力を消費しないように下を向いて歩いていると、道路に小さなベージュ色の封筒が落ちていた。
封筒を拾って周りを見渡すと、前方に小柄で華奢な体格のどこかで見たことあるような女の子がしゃがみこんでいる。
俺は三次元女子とできるだけ距離を置いていたいのだけど、今回ばかりは落とし主で困っている可能性も考えられるので話しかけることにした。
「あの、これ君の?」
「あっ! わたしのです! ありがとうございます!」
可愛い……。
その子の無邪気で邪念のない笑顔に思わず頬が緩む。
見惚れてしまっていたことに気づき、俺は慌てて頭を振った。
すると彼女が喋りだす。
「この封筒とても大切なものなんです……」
「そうなんだ、よかった。じゃあ俺はもう行くから気をつけてね」
その子は俺がその場から離れて行ってもしばらくの間、深々とお辞儀をして見送ってくれた。いいことをしたらとても気分も良くなる。
それに久しぶりに女子と喋ったような気がするなぁ……。
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