第3話 運命の再会は早々に
――放課後。
困っている女の子を助けて自宅に帰った俺は、五時に訪ねて来るであろう許嫁を家に上げるために部屋の掃除をしていた。
普段あまり掃除や家事をしないせいか、床やソファーの下にホコリやゴミが充満している。これでは家に人を上がらせるのも恥ずかしい状態。
だが、慣れない作業に悪戦苦闘しながらも、少しずつこなしていっている。
これならなんとか五時までには終われそうだ。
――ピーンポーン ピーンポーン
リビングにインターホンの音色が響き渡った。
テレビの上に吊るしてあるアナログ時計を見ると時刻は4時45分。
俺は服を簡単に着てから玄関のドアをゆっくりと開ける。
そこに立っていたのは帰りに俺が封筒を拾ってあげた女の子だった。
髪は少し茶色がかった感じでくるんとした目。
身長は高くはないけどスタイルが良く、可愛くて非の打ち所がないS級美少女。
その姿にまた見惚れてしまいそうになった。
「あっ……。さっきの」
「あ、うん。……君が俺の許嫁?」
俺が聞くと彼女はコクリと頷いた。
恥ずかしいのだろうか、モゾモゾする彼女。少し間が空いて俺から彼女に話しかける。
「凄く申し訳ないんだけど俺、陰キャ二次元オタクなんだ……。だから君みたいなリア充ぽい美少女はすごい苦手で……」
「へっ……美少女!?」
その子は驚いた後に顔を赤面させ少し俯く。
なぜ恥じているのはわからないがこれくらい酷く言わないと帰ってもらえないと思った。仕方ないんだ。
親同士の勝手な契約で利用されるわけには……。
「……ぃ」
「へっ?」
「私……。幸太くんと結婚してみたい!」
「えっ」
◆
「幸太くんの家すごく綺麗だね! キッチンも広くておしゃれだから料理が捗りそう」
「俺まだ住んでいいなんて一言も言ってないし、なんで名前知ってんの!?」
「え? だって私と幸太くんってクラス一緒だよ!」
「え?! そーだっけ?」
「それに許嫁の名前聞かされてない方がおかしいよー」
俺は全く聞かされてないのだが??
帰ってもらうつもりだったのに家に上げてしまった。
ていうかさっきまであれだけコミュ障発動してたのに、急にすごい喋り出したんだけど!?
それにクラスメイト? 色々と展開が速すぎて脳がもうキャパオーバーなんだが。
「そういえば自己紹介してなかったね」
「うん……」
「私、
「あ、綾間さんなの!?」
綾間優香は同じクラスにいる美少女。
入学してから数ヶ月間、家の諸事情で学校に来ていなかった。そしてついこの間から学校に登校しだしたのにも関わらず、男子からはモテモテ。
何十人もの男子が彼女に告白をしフラれたという噂もよく聞く。それに女子の友達も結構多い。
そんなお近づき難い人気美少女が、俺の許嫁になる(?)わけなんだが……。
「やっぱり俺みたいな奴と一緒に暮らしても楽しくないだろうし。俺、三次元の女子と結婚する気がないんだ……」
「それでもいい……。私は幸太くんに気がなくても一緒に暮らしてみたい」
「え、なんでそこまで……」
すると彼女は俺の疑問に笑顔で答えた。
「最初はね、親が決めた結婚なんて絶対したくないって思ってたんだ。自分で好きな人を見つけて幸せになりたいから。でも幸太くんの優しさをついさっき知って、もしかしたらこの人が私を幸せにしてくれるのかもしれない。結婚っていう大人への第一歩を経験してみたいって思ったんだー」
「でも俺、封筒拾っただけだよ?」
「ううん。あの時封筒を拾ってくれなかったら大変なことになってた。あなたは私の恩人であり初恋……なのかもね!」
こんな可愛い子に恩人や初恋だなんて言われたのは初めてだった。
普段あまり女子と話したりもしないので今、綾間さんと会話していることが新鮮に感じる。
でもなんか彼女、誰かにすごく似ているんだよなぁ……。
「それじゃあ、お試しで暮らしてみようよ」
「お試し?」
「うん。お試し」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます