第8話 俺の許嫁が風呂に乱入
「
元気よく玄関から帰ってきた俺の許嫁(お試し)。
その子は俺のクラスメイトでありながらも元国民的アイドルの美少女。
まだ自分ではあまり実感が湧かないけど、すごいことなのだろう。
そんな彼女を先に帰っていた俺は満面の笑顔で出迎える。
「おかえりなさい。買い物行ってくれてたんだ!ありがとう」
「いいやぁー。私、主婦なので」
「主婦!?」
腕を組んでドヤ顔する
主婦にしては若く可愛い。主婦と言ってもまだ一週間も経っていないんだけどな。
俺は苦笑いしながら綾間さんのドヤりを跳ね返した。
「なんだか釈然としないなぁー。そういえば幸太くんって社長さんの息子なんだよね?」
「あ、まぁ。でも小さな会社のね。綾間さんのお父さんの会社に比べたら小さいものだよ」
「いいや、幸太くんのお父さんはすごいよ! 私のお父さんは二代目だし、まだ新米社長だからさ」
二人で暮らし始めてからお互いの家庭のことについてあんまり話したことがなかったので知らないことも多い。だから俺は一緒に暮らしていくのであれば、もっと彼女のことを知りたいと思った。
「綾間さん、ありがと……」
「え!? 突然どうしたの……。もしかして私のこと好きになっちゃったぁ? ふふーん」
「まぁ、そんなところかな……」
「えっ。嘘!……つまんないのぉ」
少し赤面しながら頬を膨らませ細目でこっちを見てくる。多分俺がテレながら『ち、違うし!!』とか言うのを期待していたのだろう。
少し怒っているのだろうけど、全然怖いとも感じず、むしろ可愛い。
「あ! もうこんな時間だぁ。晩御飯作るね!」
「俺も手伝おうか?」
「こっちは大丈夫。作ってる間にお風呂沸かして先に入ってくれる?」
「うん。わかった」
俺は風呂を掃除して風呂を沸かした後、服を脱いで風呂に入った。
身体を洗った後、湯船に浸かると久しぶりに湯を溜めて入ったせいか、むちゃくちゃ熱い。我慢していたらだんだん慣れてくる感覚が心地よくなっていく。
「はぁ」
深呼吸し体を伸ばすと一日の疲れが一気にとれていくような気がした。こうしていると案外同棲というのも悪くない。お風呂に入っている間にご飯ができて、それも自分で作るよりも美味しくて健康的。今にも沼りそうだ。
そんなことを考えていると、直ぐ側で脱衣所のドアを開ける音がした。
「幸太くん、気持ちいい?」
「あ、うん。もうすぐ出るから綾間さんも入りなよ」
「えっ……。うん」
◆
なぜだろうか……。
俺の背中をスク水姿の美少女がやさしく熱心に洗っているのだが。
「ねぇ、綾間さん。なんで俺が風呂にいるのに入ってきてるのかな?」
「だって幸太くんが入りなよって言うからぁ」
「俺が出てからでしょ!? 普通! それに俺、水着着てないし……」
「大丈夫! 私たち夫婦だから!」
「そういう問題じゃない!!」
それに、タッチが少しエロいせいで俺の身体が色々反応してる。
これは高校生男子の正常な反応なので俺が特別変ってるわけではない。
でもクラスメイトの女子と風呂に入ってるって背徳感がエゲツない。
そう、俺は今フィクションでない限り起こらないであろうラブコメ限定の大事件に直面しているのだ。
今にも爆破しそうな理性を堪え、ぐっと膝を強くつねる。
あぁ、この関係が終わってしまった時には精神安定剤が必要になるだろう。
多分辛すぎて心が正常に保たれない。
幸せすぎる……。これは見てもいいのか!? 綾間さんっ!!
「幸太くん……。気持ちいいですか?」
「あ、はい。でも背中ばっかでちょっと痛い」
「ごめんね! じゃあ次は……」
綾間さんは俺の身体をジロジロと観察してくる。
そしてその目線はだんだん下に下がっていって、いきなり綾間さんが顔を赤くした。
「なっ! そ、そこはいいから!」
「ごめん。見てないから! 男の子のあの、それはまだ二回目だから!」
「見てんじゃねーかい!」
ん? 二回目。……二回目!?
「綾間さん。一回目ってだれなの……?」
「それは……。お兄ちゃんのを小さい頃に一度」
「よし! この話はもうやめよう!」
これ以上のことが起きると俺の理性が爆発しかねない。
決して俺たちの同棲生活はいかがわしいエロチックなものではなくて……。
「幸太くん。次は私の背中洗って……」
「ごめん無理! ていうか綾間さんは俺みたいなキモオタク野郎なんかに身体を洗われていいの!?」
「いいよ! だって旦那さんなんだし!あと自虐しません!」
「綾間さんって天然なの!?」
そういえば俺、もう四十分くらい風呂入ってるんだけど。
指にもシワが出来てシナシナ。
なにか理由をつけてお風呂から出ないと、取り返しがつかないことになりそうで……。
「ごめん! 俺、腹減ったから先に上がるね!」
俺は風呂場を飛び出して身体を拭き、急いでリビングに走った。
傍からみたら完全に『走れメロス』である。
リビングの真ん中で全裸姿の変態は呼吸を整える。
「はぁ……。フォォォォ! エクスタシー!!」
最近ハマってる映画に出てきた一度言ってみたかったセリフを叫ぶ。
その後、俺は二階の部屋に上がって服を着替えドライヤーで頭を乾かした。
すると部屋の扉をコンコンと二度叩く音。
「どうぞ……」
そう言うと少しご機嫌斜めな俺の許嫁がパジャマ姿で入ってきた。
「私に言うことはありませんか?」
「……突然出て行ってすみませんでした」
「素直でよろしいぃ」
すると綾間さんは突然、俺に抱きついてきてまたすぐ体を離した後に言った。
「幸太くんが居なくなって私、寂しかったんだから……。ほんとに」
不意打ちにそんなことされると流石の俺でも顔がほころんでしまう。
「じゃ、じゃあまた今度一緒にお風呂入ろ!責任取るよ!」
「えっ、幸太くんのエッチ……」
「はいはい。スケベな変態ですみませんでしたね」
その後二人で大笑いしてリビングで楽しい晩餐を共にした。
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