第56話 打ち明けた秘密
「おい、幸太。お前、綾間さんとは仲直りできたのか?」
「な!なぜそれを……」
「綾間さんに全部聞いたよ。あとお前がこの間相談してきたことが綾間さんとの話だってことに気づいて、その時お前、綾間さんのこと彼女って言ってたよな?」
「い、いや。別に……」
「その時お前が公園で話した女の子が三空ちゃんだって綾間さんから聞いたし。最近俺に隠し事が多すぎると思う」
「ごめんな、陽太。今日、うちに来れたりするか? 全部話す」
「わかった。俺もお前に話すことがある」
陽太はいつにも増して真剣な様子で俺の返事に答える。
この時にはもうしっかりと覚悟は決まっていた。
――放課後になり、今日は珍しく陽太の所属する弓道部は活動が休みだった。
図書委員会とも都合が合ったので早速、家へと陽太と二人で帰った。こうやって二人で放課後に並んで帰るのも久しぶりだった。だけど二人共無言でひたすら歩き続けるだけだった。
今日は優香は少し早めに家に帰ってくれているので陽太にきっちりと説明することができる。今日は優香と二人で外食をする予定なのでスッキリ解決させておきたい。
歩いているうちに家に着いて、玄関を開けると優香が正座して座っている。その光景に陽太は少し驚いた表情を見せた。
リビングに上がってもらい、優香が春の花粉症に良く効く甜茶をティーカップに注いでくれた。
「じゃぁ、俺から早速」
「……」
空間が静まり返り、陽太は俺が言う言葉をじっと待った。その表情は変わりなく真剣なもの。
「俺と優香は許嫁で、この家で同居してるんだ」
「そっかぁ。親が決めたってことだよな……お互い不満とかないのか?」
「うん。前は朝食だったり晩飯だったりを二人で決まった時間に食べるのとか、お風呂にどっちが先に入るとか、色々面倒だなって思ったりもしたんだ。でも今はそんな面倒って感情以上に優香に沢山の幸せと発見をもらってて、すごく楽しい。だから許嫁ってことは今はどうでもいいって思ってる。今まで本当に黙っててごめん!」
そう言って頭を下げると優香も遅れて頭を下げた。
俺はその瞬間から涙が止まらなくなってて、陽太の方を見上げると陽太も一緒に泣いていた。
「今度からはさ。絶対隠し事なしだからな。あと俺からのカミングアウトな」
そう言って陽太は涙を裾で拭うと、ニコッと笑って言った。
「俺さ、彼女いる」
「えぇぇぇぇええええ!!!!!!????」
思わず本能的に叫んでしまう。だって陽太に彼女なんて、地球が滅亡してもないことだと思ってたから。
「俺さ。幸太が去年から少しずつ雰囲気や表情とか変わって、すげー不安で。このまま置いていかれてしまうんじゃないかって思ってた時に仲いい女の子ができたんだよ」
「そっかぁ。全然気づかなかった。でもお前がリア充になれてホッとした」
「リア充って程でもないけどな。俺は今までどおり陰キャ三次元大好き変人だよ。今度彼女を紹介するな! あと綾間さんもありがとう! この事は誓って絶対に言わないから安心してくれ」
そして陽太はそれから三十分くらい家で話してから帰った。優香も陽太も仲良さそうでほんと良かった。
もしも今日、陽太がこの機会をくれなかったら一生隠してたのかもしれない。だからスッキリした罪悪感のない気持ちはとてもいいものだ。
「幸太くん! 今日の朝の約束覚えてる?」
「あ、うん! 外食よね!」
「うんっ! 私、回らないお寿司がいいなぁ〜」
「え、まじかぁ……」
この日、財布は空っぽになったけど。優香に助けられ、陽太とは仲直りができ、回らないお寿司も食べれたのでとても大満足な一日となった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます