第35話 許嫁と妹にハブられたんだが
「そっかぁー。お前がバイトねぇー」
大して楽しいこともないまま一日が終わり、放課後は親友の
今日は陽太も暇なようで、俺はバイトの愚痴を超大作映画の感想並の尺でたっぷりと聞かせることができる。
俺の机の上でパーティー開けしたポテトチップスのカスをボロボロ落としながら喋る迷惑者は、最後の欠片を食べ干してから言った。
「最近、
「いや、課金とかアニメのDVDとか」
今言ったのも含むのだが実際は、
一人暮らしの頃は十分に足りたのだけど、共同生活となると少し厳しいのだ。
まぁ、グッズ関しては俺だけの趣味なので綾間さんは関係ないのだが。
「それで幸太の恋は順調か? 早くしないと綾間さん、誰かに取られちゃうぞ」
「いやだから、別に好きじゃないし」
「いやいや、てかもう付き合ってるだろ。リア充まじ死ね、ウザいわぁー」
「それは言いすぎだろ。てか付き合ってもないのに変な確信を持つな」
それそろこいつにはバレそうなので、気を抜かないように気をつけないと。
いつ仕掛けてくるかわからない。
陽太には前にも俺と綾間さんが二人で下校してるところ見られてるしな……。
「まぁ、お前みたいなチキンが告白できるわけもないよな。それにあの綾間さんだし」
綾間さんは男子から結構人気も高く、数多くの人が告白してきたらしい。
だから通常陰キャ男子からしたら、手に入れる事ができない、喋りかけることもできない、そんな高嶺の花なのだ。
だが俺は通常陰キャ男子とは一味、いや二味も違い、綾間さんとは仲がいい。
でもそれは俺が社長息子で綾間さんの婚約者だからこそできた関係。
だから陽太の言う通り俺は告白もしてないし、気持ちも伝えていないチキン。
一度、綾間さんが寝ている時に少しだけ言ってみたりはしたけど、面と向かってだと恥ずかしすぎて絶対無理だ。妄想で即死ぬ。
「ていうか今考えるとお前、以外に脈あるかもな。だって一緒に帰ってくれてんだろ?」
「まぁ……」
それは俺の許嫁だからだ。
「だからお前もバイト頑張って綾間さんに何かプレゼントした後に告れ」
「なんでだよ。そんな
「いやいやぁ〜。お前ならいけるって!!」
「お前、俺がフラれるのを見たいだけだろ」
「大正解ー!」
ていうかこの間、四万円の指輪買ったばっかなんだけど……。
◆
「おかえりー!!」
「ただいま、ゲッ!……」
「え、なに? ジロジロ見るなし、キモい」
帰って早々、妹の毒舌に少しだけ落ち込む俺。
いつまで経っても妹にナメられる兄、なんだか虚しいな……。
「なんで
「居ちゃ悪いの? あぁ、そんなに優香姉とイチャイチャしたいんだ」
「なんでそうなるんだよ」
ていうか、ちゃっかり綾間さんのこと優香姉って呼んでるし。
進展早くない?
「それじゃあ、お兄はてきとうに御飯食べてて。……優香姉!これ見てよ!」
兄への扱いが雑な妹は、俺を放おっておいて綾間さんと人気動画アプリを観始めた。
女子が二人となると一人の男子は大抵居場所をなくし、俺みたいにハブられる。
なので俺はむさ苦しい男とばかりスマホでやり取りをし、妹が帰るまでの暇を潰すしかないのだ。
綾間さんの作ってくれた晩御飯も食べ終えて、陽太の気色の悪くやたらリアルなオジサンスタンプのスタ連の返信にも飽き、いよいよやることがなくなってきた。
テレビを付けて番組表を確認してもクイズ番組やニュースばっかだし面白くない。
「綾間さん。その動画、なに観てるの?」
「お兄は黙ってて!!」
千花めぇ、兄をハブりやがって……。
一人の時は寂しいなんて一ミリも思わなかったのに。
三人も部屋にいて、一人だけハブられてると結構寂しい。
目でかまってほしいと訴えるも、綾間さんは千花と動画に夢中で見向きもしてくれない。
これが兄の役目、でもあるのか……。
綾間さんと千花が仲良くなるのは良いことなのだけど、そろそろ流石にかまってくれないとマジで病みそう。
「――お兄!」
千花が話しかけたのは動画を見始めて一時間も後のこと。
俺は目を輝かせて拳を握りしめ笑顔で振り向く。
「どうした!!帰るか?」
「いや、水かジュース注いできて」
「あ、はい……」
はぁ、今日は二階に上がってアニメでも観て癒やされよっと。
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