第52話  お悩み相談

幸太こうたくん、私に言うことあるよね」

「……う、うん」


 俺の顔をジッと見てくる優香ゆうかからは、今まで感じたことのないくらいの強い圧を感じる。


「いや、あの子は……。三空みくちゃんは俺の小さい頃の幼馴染で」

「ふーん!放課後の日が沈みかけな公園でロマンチックなイチャイチャ浮気デートしてたんだぁー」

「ち、ちがうよ!!あとしっかり情景描写まで言わなくて大丈夫だからね!?」


 これ様子では随分と機嫌を損ねてしまったようで。全く許してもらえる気配がない。


 もしも初恋の人だってバレたりでもしたら火に油だぞっ……。


「幸太くんはさぁ。私が他の男の子と喋ってても嫉妬しないの? この気持ちって私だけが感じるものなの?」

「いや、俺だって嫉妬することあるよ。でも三空ちゃんは幼馴染だし、恋愛感情なんか全くないだろうから……」

「良くない!!それにあの時の幸太くん……。とってもニヤニヤしてた」


 反撃を続ける優香の説得に努めるのだが解決案が思いつかず。頭の中は『逃げたい』という感情でいっぱいいっぱいになっていた。


「ごめん。でもあれは、ほんとたまたまで」

「でもさ、たまたま公園で会う? 幸太くん帰り道と全然違うし」

「それは思い出の公園で、ちょっと寄ろうかってなって」

「言い訳なんか聞きたくない」


 そう言うと優香はすぐに部屋を出て行ってしまった。

 この喧嘩の原因は俺にある。でも優香も少しぐらい話を聞いてくれれば良かったのにって思った。初めての大喧嘩で初めて二人の歯車が噛み合わなかった。







            ◆






「なぁ、陽太ようた。これは俺の友達の話なんだけどな」

「お、おう……」

「幼馴染の女子と久しぶりに公園で再開したところを彼女に見られたらしくて」

「ほう」

「それで事情を説明しようとしても全く聞いてくれないらしいんだよ。どう思う?」


 放課後。陽太のいる席の前の椅子を借りてさっそく昨日の相談をしていた。

 俺の質問に陽太は顎をつまんで考え込むと、少しして口を開いた。


「それはどっちも悪いんじゃないか? だってお前の友達(幸太)はだってことを黙ってるんだろうし、彼女は彼女で少し精神が不安定な時に二人の浮気疑惑の現場を発見してしまってカッとなったんだろうし」

「ん? 俺、お前にその幼馴染が初恋の人だって言ったっけ?」

「あ、いや。言ってないかも」


 陽太に相談したにしては良い答え。やっぱり他人の真剣な話なので真面目に答えたのだろう。


「じゃあ、どうやったら仲直りできると思う?」

「うーん。まぁ、一番は彼氏がしっかり謝ることだな。カップルは大体、男が弱いと長続きするもんだから。そいつは陰キャなんだろうしなんとかなるだろ」

「そっかぁー。って、お前、彼女いないくせに恋愛事情得意だよな」

「そりゃー、ラノベ読みまくってたらなんとなくわかるだろ」

「凛々しい顔で言うな。ラノベは恋愛の参考書かなんかか」


 なんでこいつは俺よりも女心とか分かってるのにモテないんだろ。あ、忘れてた。こいつ変態超人だったわ。


「まぁ、ありがとな。さっきの友達に伝えとくわ」

「おう。まぁ、そいつのことは俺が一番わかってるつもりだから。いつでも相談しろよ」

「あ、うん。わかった」


 話が終わるとすぐに陽太は席を立って教室を出ていった。

 ちょっと自信ができたかな? それに……


「そいつのことは俺が一番わかってるつもりだからかぁ。バレてんじゃん」












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