第14話 初めてのデートで嫁の可愛さに気づいた?
大型ショッピングモールの前にある公園のベンチに座って綾間さんを待つ俺。
一緒に行こうと誘ったのだけど初デート感を出したいと言われ俺だけ先にタクシーに乗ってやってきた。
多分綾間さんは待ち合わせシチュエーションから始まりたかったのだろう。
今日のデートプランは綾間さんが考えいてきてくれるとのことだが、主に今日は二人が好きなアニメの映画を観るというもの。
綾間さんに任せてばかりだと良くないのでなるべく自分も役に立ちたいのだけど……。
「幸太くんー!! おまたせっ!」
その声が聞こえると俺は顔を上げポケットにスマホをしまった。
「ごめん!結構待たせた?」
「いいや、そんなこともない。スマホあったから暇にならなかったし」
「それなら良かったぁー」
今日のデートのためにオシャレして急いで来てくれたというのに、遅かったと言うのも悪い気がした。というか今日の綾間さん、めちゃくちゃ可愛い……。
ロングカーディガンを羽織り短めのスカートの下からは薄黒タイツを覗かせる。
流石、元国民的アイドル。自分が似合う服をちゃんと分かっているようだ。
「この服の感想聞きたいなぁ……」
「あ、うん。可愛いよ」
「え!? それだけぇー!」
感想はむちゃくちゃある。
でも年齢=彼女なしだった陰キャ男子の俺に突然元アイドルの可愛いお嫁さんができてしまったという結構レアケースな状況なので、それを口に出して伝えるのには色々と勇気がいるのだ。
すると綾間さんは少し拗ねながらも俺にギュッとくっついてくる。
「私の機嫌を取ってください」
「結構クリアさせるのには難しい頼みなんだけど……」
「それでもやるのぉー」
なんか今日の綾間さんは俺に結構デレてくる。これもデートの一貫なのだろう。
少し恥ずかしがりながらもその可愛い笑顔に頬が緩んでしまう。
そんな幸せな恋人(仮)のイチャイチャタイムは続くのだけれど腕時計を見ると映画の上映時間の三十分前。
「綾間さんそろそろ受付行かないと遅れちゃう!」
「あ、ほんとだ!」
急ぎ目でショッピングモールの入り口へと向かうと、建物の中はすごい人混み。
入って行こうとすると手を握られる感触がして後ろを振り返った。
「
「えっ……。今日の綾間さんってなんだか積極的だね……」
「そうかな? せっかくのデートなんだから今日は全力で彼女したいなって」
心拍数が急に速くなるのを感じる。
今まで二次元ばかりに理想を抱いていた俺が一人の三次元女子にドキドキするなんて……。
最近俺の許嫁が結構可愛く思えてきた。
◆
――映画館の受付に着くと、綾間さんが座席確認とキャラメルポップコーンを買って来てくれた。判断が早い!(笑)
「映画館で買うポップコーンって美味しいよね!」
「そうかな……。全部同じな気がするんだけど」
「幸太くんはわかってないなぁー。作りたてで温かいし口当たりもいいのぉ!」
ポップコーンにそこまでの思い入れはないし、映画館で買うから美味しいと思ったことも一度もない。でも陽太にポップコーン奢ってもらった時は美味かったなぁ……。
多分それは陽太の金で食べたから感じるものなのかもしれない。
それはさておき、俺と綾間さんは指定された座席へと暗くて長い廊下を歩いていく。
壁には沢山のポスターが貼り付けられていて、どれもCMでみたことある作品ばかり。
「あ! この作品面白いんだよっ!」
「観たことあるの?」
「うん! この間友達と観に行ったんだぁー」
「そうなんだ」
それにしてもなんで変装もマスクもしていないのに綾間凪咲ってバレていないんだろ……。この前まで人気国民的アイドルで、テレビでも毎日CMやバラエティー番組に出演していたはずなのに皆見向きもしないまま通り過ぎる。
「ねぇ、綾間さん。なんで皆綾間さんに気づかないのかな?」
「う〜ん。多分、普段はメイクが薄いからかな」
「そんなんでわかんなくなるの?」
「うん。意外とそうみたいだよ? 仕事の時は濃いめに塗ってたから」
そう言われてみれば前は髪型もポニーテールだったのに今は髪を解いたロングヘアーだしメイクも今の方が結構薄い気がする。
そういえば俺も最初は全然気づかなかったんだっけ……。
そして綾間さんとの会話を楽しみながら薄暗い劇場に入り座席に座た。
◆
――映画が終わって劇場から出ると眩しい光が瞳孔を刺激する。
隣を見ると気分の良さそうな綾間さんがアニメの主題歌を鼻歌で歌っている。
「綾間さん。むちゃくちゃ面白かったね!」
「うん! やっぱり二期の続きだったかぁー!」
楽しく映画の話で盛り上がりながらフードコートのテーブル席に座ると綾間さんが黙る。
「ねぇ、綾瀬くん。……これからどうする?」
「えっ……。考えてなかったんだ」
「綾瀬くんは?」
「ごめん俺も……」
自己中な俺は今日のデートプランは全て綾間さんが考えてきていると思っていた。
流石の綾間さんだってそこまで俺の都合よく動いてはくれない。
俺は少し罪悪感を感じながらも綾間さんに話しかけた。
「今日はもう仕方ないから帰ろっか?」
「うんそうだね」
二人顔を見合わせて苦笑いしながら席を立って出口の方へ歩いて行った。
――家に着くと一気に身体の力が抜ける。
デートというのは結構精神を削るもののようだ。
ソファーにもたれてテレビを眺めているといつものラフな格好をした綾間さんがリビングに入って来て言った。
「今日は色々上手く行かないこともあったけど楽しかったね」
「……うん!」
その笑顔は今日の残念だった部分全て忘れさせてくれるくらいに可愛くて優しいものだった。
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