第62話  卒業してないよな?? 

「なぁ、幸太。お前まだ……。いや何でもない」

「え!? いや、そこは最後まで言えよ!」


 深刻そうな顔をして机にへばりつきながら何かを言いかけた親友の陽太。

 こいつは人間じゃないので何を考えているか理解ができない。


「え、でもさぁ。お前怒りそうじゃん?」

「話の内容にもよるけどな。まぁ、大抵、陽太の話はしゃくさわる」

「なら言わん!」


 誤解を生むかもしれないので一つ訂正しておこう。


 陽太は一応、生き物のくくり的には人間の分類だ。俺が言いたいのは知性のある人間ではないということだ。


「陽太。言わなかったらこの間の三千円のソシャゲの課金(借金)に利子つけるから覚悟しとけ」

「ちッ、わかったぁ! 言う言う」


 そう言って深呼吸すると眉を高くした陽太は俺の想像を遥かに超える質問をした。


「お前てさ……。まだヤッたことないんだよな」

「・・・・・は?」


 陽太の真剣な眼差し。なんでこんな発言を堂々とした顔で言えるのか。

 あ、そうだこいつ人間じゃないんだった。


「なんだよ、そのゴミを見るかのような目は」

「お前、心が読めるのか。 今、人間じゃないお前と話しているのを後悔してたところだ」

「今日も幸太は毒舌王子だな」


 ちょっと悪口が過ぎたので気を取り直して……。


「卒業してない」

「は? 当たり前だろ」

「じゃあ、なんでお前は童貞かどうかを俺に尋ねる」

「あぁ!! 卒業ってそういうことね!」


 俺が専門用語を使ったせいではずかしめを受けたではないか。てゆうかなんで卒業で伝わらないんだよ、クソ。


 『ちなみに良い子のみんなはまだ知らなくていいことだから聞き流して良い。』


「でも、お前の服から綾間さんと同じ匂いがするんだよ」

「そりゃ、一緒に住んでるからな? それとここで話すな」

「やっぱり一緒に寝てるとか?? 朝、綾間さんをいだ時に気づいたんだけど」

「お前は耳が無いのか?それとお前からは犯罪の匂いがするのだけど通報してもいいよな」


 一緒に服も洗濯するし、同じ家で暮らしてるんだから匂いぐらい一緒になるだろ。

 あと、あの布団を干してる事件から何故か優香が俺のベットで毎晩寝るようになってしまった。こんなこと陽太に伝えたら刺されそうなので絶対に言えないが。

 これは合法。許嫁なのだから一緒に寝てはいけないルールはない。


「いいなぁ。美少女と一つ屋根の下」

「お前にも、一つ屋根の下に美少女いるじゃん」

「それはコレクションの美少女フィギュアと抱き枕ちゃんな。俺は三次元の美少女を求むのだ」

「じゃぁ許嫁作れば?」


 陽太は俺が優香と許嫁だという関係を知っている。それは優香が俺と喧嘩した期間に優香が陽太に打ち明けたらしく、知られてしまった。


 でも陽太が珍しく気をきかせ相談にのったらしく、お陰で僕らは仲直りできたのだ。


 それはこいつにも感謝しないとな。


「なら優香ちゃんを俺にくれ」

「やるかドスケベ。お前と暮らしたらロクなことにならん」

「幸太は下心が丸出しで危なっかしいから」

「それはお前のことだろ変態宇宙人」


 何を考えているかわからないけど、こいつの友達するのは何かと面白い。けどウザい。


「卒業してないならお前も同類、変態宇宙人だな!」

「なんだとこら!」

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