第63話 記念日
「ふふふーん!」
今日もバイトを終え、家に帰り、
ダイニングテーブルを見ると、そこには普段よりもハイクオリティな料理が沢山並んでいる。
優香のご機嫌もすごく良さそうでなにか祝い事かな?と考える。
「帰りました!」
「
「うん! 優香もお疲れ様!」
優香に『おかえり!おつかれさまぁ』って言われることも今では日常となっているが、僕はこの言葉の有り難さを忘れないようにしている。
いつも学校やバイトで疲労が溜まったりしても優香の『おかえり』と『お疲れ様』があれば一瞬で疲れを忘れられる。僕だけじゃなくて優香も沢山頑張ってるんだって思うとやる気が増すのだ。
それにしてもどうだろう……。
今日の優香はいつも以上にルンルンしている。
マフマフなカワカワな猫の中の猫! 今すぐにでも頭をヨシヨシしたい。
「優香? 今日何かいいことあった?」
「うーん……。今日がいいことなんだよ! 幸太くん今日はなんの日かわかる?」
なんだろう。はずしたら非常にまずいぞ。
「誕生日!ではないもんね……。ゴミの日!では絶対ないもんね……」
なんだその残念そうな顔は!
優香の元気は一瞬にして消え、悲しそうな顔でうつむいている。
「そ、そうだ! 今日は記念日だね!!」
俺は一か八かで何かしらの記念日であることに掛けた。
少し間があり、その間も気持ちは落ち着かない。
「幸太くん!!大好きー! 覚えててくれたんだね!」
「お、おーう!」
はぁ……。ヒヤヒヤした。
「今日は私たちが同棲を始めた大切な日なんだよー」
桜が散って道路に貼り付けられたように綺麗に見えたあの時期。父さんに許嫁と同棲することを強引にお願いされてしまい。その相手がまさか元アイドルでクラスメイトのS級美少女、
あれからまる一年。今では二人共高校二年生。
よくクラスメイトや周りの人たちが僕らの関係が婚約関係であるということに気づかなかったものだ。
「もう一年かぁ……」
優香と出会ってから沢山知って、経験して。成長してきたんだよなぁ。
「優香ありがとう」
「と、突然言われると恥ずかしいよぉー」
『本当に感謝してるんだ』
「今日のご飯も美味しそう!優香また料理の腕上げたね!」
「え!!ありがと!気づいてくれてたんだ……」
優香の作った料理はどれも美味しくて、永遠に食べていられる。なんでこんな冴えない俺がいつも側に、君のとなりにいられるのかって思ってた。
でも今ならわかる気がする。
「僕さ。優香のこと本気で好きだよ」
「ん!? きゅ、急にどうしたの!???」
「内緒だよ!」
「もぉー! わたしもす、すきだよ……」
我ながら今日も気持ち悪いけど、想いは伝えた。
この恋にまだ『恋人』とか『夫婦』とかそういう決まった名前はないけれど。『許嫁』から始まったこの関係は僕の中での『恋人』よりも大切なものだった。
「あ、幸太くんテレてる」
「き、気のせいじゃないかな?」
「だいすきだよ」
「う、うぅ。からかわないで!」
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