第58話 G退治
昔、父さんは言った。Gを捕まえられない男は一人前になれないと。あの時俺は馬鹿げている、何が一人前だと思った。だけど、いまならわかる。
「キャー!!」
「どうした
突然、優香のわめき声がする。心配になって部屋のベットから起き上がった俺は、すぐさま一階へと降りた。キッチンへと着くと優香が半泣き状態でうずくまっている。
「優香どうしたの?」
心配になり声をかけると優香は怯えながら言った。
「あいつが出たの……」
「あいつ??」
「うん。Gがでた」
「な、なんだって!!??!!」
Gといえば大体、古くて、ジメジメと湿気があって、暖かく、陽の当たらない物陰がある家に出るということを耳にしたことがある。
「優香、それは本当なんだね?」
「うん……。さっき朝ご飯をここで作ってたら」
「なんだって!!??」
「まだ言ってない」
優香によるとその容疑者Gは、朝ごはんを作っていた優香の前を軽やかに何度か
「そうかぁ……。前に
「そんなにいるの!? 嫌だ! わたし、幸太と同棲してるのに、G百匹とも暮らしてたなんて!」
「大丈夫だよ優香」
そして俺は物置に忍ばせていた最終兵器を出した。
「これは最後の手段にと思っていたんだけど。ついに使うときがきてしまったようだね」
「そ、それは!」
俺が物置から取り出したのはGを退治するためだけに作られたスプレー。ゴキジェットだった。
ゴキジェットには即効性があるピレスロイド系成分のイミプロなんとかかんとかが配合されているので、足の速いゴキブリも確実に仕留めることができるのだ。
「優香! Gはどこにいるんだ?」
「見失った。でも、キッチンからは出てないはず」
「それは甘いよ、優香。奴らは知らない間に隙間や優香の真隣をすり抜けるんだ」
「ヒィ〜」
そう言ってると突然、ザザッ!とキッチンの隅から音が聞こえた。
俺は緊張を飲み込んで、恐る恐る近づく。
神経を研ぎ澄ませ、一切邪念のない俺はジェットを握りミストを勢いよく噴射した。
「倒せた?」
「……うん!!」
こうして我が家には明るい平和が戻ったわけだが、『一匹いたら百匹はいる』あの陽太の言葉を今でも思い出してしまう。
「幸太くん。ありがとぉ」
涙目で俺の身体にしがみつく優香。もしかしたらGのおかげでこんなにも可愛い優香を見ることができたのかもしれない。
「幸太くん……。後片付けもお願いします」
「は、はい」
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