第19話 アイドルグッズ専門店でお宝発見!
金曜日の放課後。
俺は
目的は推しアイドルのライブグッズを買うため。
前まではアイドルにあまり興味がなかったのだけど、陽太の影響もあって最近は無料動画サイトでライブを見たりもしていて少しハマりだしている。
今日は、日曜日に行われる陽太の好きなアイドルグループのライブグッズをゲットするべく足を運んだのだけど結構楽しい。
普通、初めてならアイドルグッズ専門店に入るのなら、少し抵抗があってもおかしくはない。だけど俺はしょっちゅうアニメグッズ専門店に通っているので恥じらいなく入店することができる。
別に自慢ではないが、俺は童貞陰キャ二次元大好きオタクだ。
グッズを一つ一つ見て関心していると、目の前を歩いていた陽太が急に立ち止まる。
「うぉぉぉおお!! これ綾間凪咲の限定特大チェキじゃねーかぁ!!」
「声がでかい!」
陽太が見つけたのは、綾間さんがアイドルだった頃に一部の店舗のくじ引き企画で一等の景品になっていたサイン入りチェキ。
写っているのは笑顔でピースサインをするメイクをした綾間さんだ。
写真からは楽しそうな雰囲気が伝わってきて、その笑顔にドキッとする。
「な! ナギタン可愛いだろ?」
「あぁ、可愛い……。てかナギタンってなんだよ」
自分のガチ嫁(まだ許嫁)をナギタンって陽太に呼ばれると少しムカつく。
でもアイドルというのは皆の人気ものであり商品。
俺一人が独占していいようになる日は一生おとずれないのかもしれない。
「おぉ!MIXトラップの等身大パネル!」
「お前、そんな物うちに持って帰れないだろ。それにライブに関係ないし」
「いやいや、これを逃したらもう一生手に入らないかもしれねぇー!」
陽太は派手でアニオタが背負ってそうなリュックから財布を出して中を確認する。
「7,000円かぁ……。4,000円足りねーな。
「は!? 俺出さないからな?」
「えぇー! お願いだ! 一生に一度のお願いだからよぉー」
一生に一度のお願いとは言うけど、絶対二度,三度あるに決まっている。
俺は一応財布を確認するが中には3,500円しか入っていない。
「陽太、俺の合わせても足りないぞ。諦めろ」
「えぇー」
「突然家にアイドルの等身大パネルを持ち帰ってきたら母親が泣くぞ」
親が家に居ない俺ならまだしも、陽太の家には親も祖父母もいる。
万が一見られたら、俺なら恥ずかしくて部屋から出られなくなると思う。
落ちるとこまでテンションの落ちた陽太は顔を青くして放心状態で謎の呪文を唱えている。
少し気の毒だがお金がないのならどうしようもない。
このまま店の脚立に座らしておくと店員さんに怒られそうなので、カゴに入っている商品だけを持ってレジへと向かう。
その途中、気になるグッズを見つけたのでついでにカゴに入れておいた。
会計をして店の外に出るともう結構暗い。
綾間さんには晩御飯はいらないと伝えておいたので、今日は陽太を連れてサイゼリアに行くことにした。
勿論今日は陽太のおごりで。
――タクシーを降りると半年前までは毎日暗かった俺の家に明るい電気が灯っている。それだけなのに何故が気持ちが安心しているよう。
「ただいまー」
「おかえり、ええぇぇ!!??」
玄関に入ると綾間さんが出迎えてくれるのだが少し気まずい空気になる。
なぜなら俺は今、右手に綾間凪咲の膨らませて使う抱きまくらを持っているからだ。
「ねぇ、それどうしたの?」
「あぁ、今日陽太とアイドルグッズ買いに行ってつい……」
「もぉー。恥ずかしいから買ってこないでよぉー」
顔を赤面させポカポカ俺の胸を叩いてくる。
それをなぜだか俺は愛らしく思ってしまっていた。
少し綾間さんが落ち着いてからリビングに入りソファーに深く座る。
すると隣から頬を膨らましまだご機嫌斜めな綾間さんがジトーと見てくる。
「ごめんって……。クローゼットにしまっておくから」
「え? 使わないの?」
「え、使わないけど……」
するとさっきよりも綾間さんの顔が険しくなる。
「浮気者ぉー!」
「いやいや、隣で綾間さんが寝るのにこれ抱いて俺が寝てたら色々マズイでしょ!」
「ふーん。でも浮気対策に持たせて寝させるのもいいかも……」
「しないから!?!」
「でもこの間、私が居ない間に綺麗な先輩と楽しく話してたじゃん?」
「あれは俺が一方的に絡まれたんだ」
少しニヤつきながら俺をイジメてくる綾間さん。
俺が一生懸命に弁解しているのを面白がっているのだろう。
このように彼女はたまに天使から小悪魔になることもあるのだ。
「それじゃあ、幸太くん。私を抱きまくらにして寝てみる?」
「は? な、そんなことするわけないでしょ!?」
「冗談だよぉー」
からかわれていると分かっているのに見破れないのは俺が綾間さんを信用しすぎているからなのかもしれない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます