第43話 恋愛のスペシャリスト
「幸太くん。お話があります」
外は寒くて中はとても暖かい。
そんな温度差の激しい我が家のリビングでは、ソファーに正座して畏まった様子の許嫁がいる。
そしてお話という堅苦しい言葉にビビりながらも俺は聞き返した。
「どうしたの?」
「うーんとね、クラスの友達に好きな人がいるらしくて。相談にのってほしいなぁーって」
「あ、あぁ!そうゆうことね」
「??」
昨日、冷蔵庫のコーヒーゼリーを勝手に食べたことは、まだ気づかれていないようで。胸を撫で下ろし安心する俺。
恋愛相談は得意じゃないし、恋愛経験ゼロの俺に聞かれてもなぁーと思ったけど。コーヒーゼリーを勝手に食べた罪滅ぼしに手伝ってあげることにした。
「それでその友達って女子?」
「うん。
「あぁー。あの人かぁー」
優香が心暖ちゃんと呼ぶその子は、同じクラスメイトの黒髪ボブ美人の女の子。
男子の間でも結構人気があって、静かで清潔な見た目がとても男子ウケしている。
あと、たまにおっちょこちょいなところも可愛い。
でも、ウチのクラスで一番ずば抜けて人気な美人は優香なんだけどな。
誰もこの国宝級美少女には勝てないであろう。
「それで人気美少女に好きな人がいると……」
「うん!!恋愛のスペシャリストしてる幸太くんなら簡単だよね!」
「ん??? それ、誰から聞いたの!?」
「陽太くん!」
あいつ……。だいぶん前に冗談で言った話を優香にまで話しやがって。ほんとに陽太は口が軽くて信用できない奴だ。
陽太や友達と話してる時に、自分のことを恋愛のスペシャリストだとか言って自慢していたのは遠い昔の黒歴史。
中学の時は結構調子にのっていたし、ナルシストキャラを演じていたこともあったし。だから今でもよく友達にイジられる。
だがそれは、あくまで学校でのキャラクター。本当に自分のことをカッコいいだとか、恋愛のスペシャリストだと思って生きていたわけではない。
まぁ、今となっては後悔でしかないのだけども。
今度陽太に会ったら、しっかり締めておかないとな。
「恋愛のスペシャリストってどうやったらなれるの?」
「いや、別に資格とかじゃないし……。それで心暖ちゃんのことだよね?」
「あ!そうそう」
なんとか話題を変え、もう掘り起こされてはならない黒歴史から回避。
優香に知られてしまうのは、先生にスマホを取り上げられ反省文を書いた後みっちり叱られるよりも残酷である。
優香が知る俺のイメージだけはあまり変えてしまいたくない。
話を戻すと俺は真面目に優香の友達の恋愛相談にのる。
これも未来の夫としての義務なのかもしれない。
「うーん。多分その子は心暖ちゃんのこと好きだよ」
「ほんと!?」
「うん。だって好きじゃない女の子と一緒に毎日下校しないでしょ!」
だって俺が
帰ってた理由って好きだったからだったし!
でも今となってはあれも黒歴史かぁ。フラれた後、優香に出会うまでは、病んで毎晩狂った小学生とサバゲーやって学校ではリア充にガン飛ばしてたなぁー。
俺の恐ろしくバカみたいな黒歴史はさておき、心暖ちゃんは結構脈アリという結果に至った。だけどこれも俺が間違っていた時に問題ごとに発展するのも嫌なので、保険かけておこ……。
「で、でもだよ!これは童貞陰キャ男子の意見だから間違ってるかもしれないよ」
「大丈夫だよぉー。幸太くんはスペシャリストなんだから」
「だから違うよ!!??」
メンタリストとかスペシャリストとかテロリストとか。リストの付く人ってなんだかんだで炎上したり叩かれたりしがちなので、俺はそれになりたくはない。
あっ……。リストが付くもの全てに悪い印象があるわけではないので、そこは理解してもらいたいところ。って俺、一人で誰と会話してんだ?
「じゃあその子にはなんて伝えれば正解かなぁー」
正解なんてないんだぜっ、ってカッコつけて言いそうになりながらも俺は真面目に答えた。
「慎重にゆっくりと距離を縮めていけばいいんじゃないかな。僕は昔、調子のってすぐに告白してフラれたからさ。まずは仲良くなるところからだよ」
「そーだよね!わかった伝えとく!」
お互いコミュニケーションを取り合っていれば、少しずつ相手の良いところも悪いところも見つかるだろうし。
俺は脈アリだと思うけれども、急かして失敗したら申し訳ないのでこれはアドバイスとして聞いてもらえればよい。
ていうか俺はいつからこんなに偉そうな人間になってしまったんだ……。
やっぱ恋愛って面倒くさい。
「幸太くん相談のってくれてありがとうぉ!!だいすき!!!」
こともないかもしれない。(苦笑)
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