第50話  「上書き完了」ってメンヘラ!?

 穂花先輩と図書室でキスをしてしまった!!!

 ……って、学校というパブリック(公共の場)でキスとか。ファーストキスとかしても犯罪じゃないよね!?? ていうか未成年ってキスしていいの!?


 今まで恋愛という二文字を嫌って生きてきた元非リア充には到底わかるはずのない境界線。キスという行為は何歳からしても良いのか。キスをしたら妊娠してしまうのではないか。といった不安に絶賛苛さいなまれ中の幸太こうたは、朝から壁に頭をぶつけうなりり声をあげていた。


「こ、幸太くん。何してるの?」

「壁に質問してるんだよ」

「はぁ……。悩みがあるなら相談のるよ!!こないだも言ったけど」

「じゃぁ、聞いてもらおうかな」


 ここは一度誰かに相談したほうが良いと思った俺は、髪に寝癖がついたままの優香ゆうかをソファーに座らせ、その正面に座った。


「これは俺の友達の話なんだけど!!」

「それ言う人って大体自分の話なんだよなぁー」

「え、ち、ちがうよ」

「う、うん」


 まだ話し始めたばかりなのにいきなりバレているだと……。

 元国民的人気アイドルめ、またスキルを発動させたな!!


「まぁ、それはおいといて。そのね」


 それから俺はバレても尚、名前だけは隠し続け。図書室であったことを優香に大まかに話した。


「うーん。多分その人(穂花先輩)は妊娠するだろうね」※大嘘

「や、やっぱりそう!!??」※大バカ


 そして優香はコクっと頷いて、険しい顔で言った。


「そーだねぇ。これは結構深刻な状況だよ……」

「俺はどうすればいいだろう!流石に高校生でお父さんは早すぎるよ!!」

「やっぱり穂花先輩とキスしたんじゃん!!!」

「あ、う、うん!!!ごめん!!本当にごめん。今度なにか奢るから!助けて」

「お、奢るって……。うぅ、仕方ないなぁー。今回だけだぞぉー」


 そう言うと優香はこっちこっちと手招きをし、耳元で言った。


「助かる方法は一つ。それは他の女の子とキスすることです!……それじゃ、目閉じて」

「え、目閉じるの?」

「うん。だって恥ずかしいもん」


 目を閉じて開けるまでの間。俺は優香がどんな表情で。どんな気持ちで俺とキスをしたのかはわからない。だけど、優香の唇は冷たくて柔らかかった。


「これで上書き完了」

「ん?」

「いや? なんでもないよぉー」






           ◆






「うーん。「上書き完了」ってどういう……」

「どーした幸太。いつもの変態被害妄想の始まりか?」

「そんなのしたことはない。ていうか、陽太のせいでいつも被害にあってんだ」


 今日も朝からダル絡みしてくる鬱陶うっとうしいこいつは、親友の山崎陽太やまさきようた。何気に付き合いは長くて切っても切れない腐れ縁。

 変態でロリコンで二次元と三次元のハイブリットオタクなこいつと朝は毎日教室の隅っこでくだらない話している。


「どうした幸太。話してみろよー」

「そうだなぁ。例えばだぞ、俺が女の子にキスされて。それを自分の彼女(許嫁)に話したらその子にもキスされて「上書き完了」て言われるんだけど。どういう意味かわかるか?」

「うん、そーだなぁ。お前がクソキモ妄想野郎で、その彼女はメンヘラ彼女ってことくらいだ」

「メンヘラ??」


(メンヘラとは精神的な健康状態を表す「メンタルヘルス」の略で、精神的に不安定で自分のことで周りを振り回してしまう様子のこと)※ネット参照


「いや、メンヘラではないだろ」

「最近はそんくらいもメンヘラって言うんだよ」

「へぇ……」


 まさか、優香は俺にメンヘラしているのか!!? いや、普通は彼氏(許嫁)が他の女の子(穂花先輩)にキスされたって聞かされたら嫉妬するもんだろ!? 

 まさか、メンヘラはこの程度でもメンヘラになってしまうのかメンヘラ……。


「あぁ、頭の中がメンヘラでいっぱい」

「まぁ、お前にそんな天国のようなバカンスは一生訪れねーよ。安心しろ」

「なんかハラタツ」


 今日の考察。メンヘラとは奥が深い言葉だった。








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