第17話  秘密にしていた俺の朝の起き方と朝食

『ねぇ、朝だってばぁ。起きてー。もぉ、学校遅れちゃうよー』


 馴染みのある可愛い声がスマホから聞こえてくる。

 これは俺の好きなソシャゲキャラのキュン極目覚まし音声アラーム。

 この声さえあれば毎日の目覚めが愉快になる。


 流石にアニメ好きの綾間さんでも聴かれると気まずくなるので、とっくに一階に降りている頃の七時にアラームを設定している。


 俺には日本一可愛い許嫁がいるというのに……。悲しい童貞だぜ……。


 ガチャっ……。


「幸太くん。おはよう!」

「うわっ!?」


 ベットに座ってスマホに気を取られていたものだから、急に声を掛けられ声を出して驚いた。多分、俺をわざわざ起こしに来てくれたのだろう。


 そして朝食を作り終えた制服姿の綾間さんが不思議そうに、こっちを見てくる。


「なんかさっき女の子の声がしたんだけど……」

「あぁ、その……。目覚ましのアラーム音的な?」

「あぁ……」


 やはり気まずくなった。

 そりゃいくらアニメ好きな女の子でも、二次元キャラの美声アラームで起きている男子を目撃してしまったら流石に引いてしまうに違いない。


 俺は苦笑いしながら心の中でガッツリと落ち込んだ。


「まぁそれは幸太くんだけじゃないだろうし、人それぞれ起き方ってのはあるよね」

「え、いや。まぁ……」


 落ち込んでいるのに察してくれたのか、フォローしてくれる綾間さん。

 だけどそれが追い打ちのように内心をエグッてくる。


 綾間さんは気を使って他のことに話題を変える。


「幸太くん、大体いつも私より遅く起きてくるよね?」

「あー、うん。大体七時にアラーム仕掛けてるから綾間さんよりかは遅いかな」

「寝起きとかは、結構いい方?」

「あーまぁ。悪くはないと思うよ。綾間さんは?」

「んー。私は日によるかなぁー。いい時もあれば悪い時もって感じ」


 以外だなぁー。いつも朝早い綾間さんに寝起きが悪い日があるなんて……。


 そんな、ありふれた当たり障りのない会話をして俺と綾間さんは寝室を後にした。

 一階に降りるとリビングのガラステーブルの上には美味しそうな料理が並べられている。


皿に乗っているのはまだ少し熱そうなウインナーと目玉焼き。他にもスープやサラダがあってバリエーション豊富だ。


毎日朝からこんなに沢山の料理を作ってくれていることにむちゃくちゃ感謝しつつ、前までインスタント生活をしていた俺を凄く情けなく思う。


「いただきまーす!モグッッ、モグッッ。美味し!」

「うん!綾間さんはやっぱ料理上手だね!」

「ほんと!? ありがとぉー!!」

「うん……。綾間さんの未来のパートナーはむちゃくちゃ幸せになるんだろうなぁー」

「えっ、幸太くん何言ってんの?」


 するとテーブルを挟んで正面に座っている綾間さんは前屈まえかがみになり顔を近づけて言った。


「私の旦那さんは幸太くんでしょ!」


 今の一言で全身が一気に熱くなっていくのを感じる。

 テレているのを悟られないよう目を逸し、平然とした表情を保とうとするのだけど。


やっぱりにニヤけそうになり手の甲を強く抓った。














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