第5話 元国民的アイドルの連絡先をゲットだぜっ!
ピロンッ……ピロンッ
「ん?」
スマホの着信音のような音が聞こえて俺は目を覚ました。
隣ではテレビや雑誌でしか見たことがなかった元国民的アイドルが無防備に眠っている。
いくら童貞で見た目も弱々しい奴が許嫁だとしてもここまで無防備だと心配になる。
俺って本当に男として見られているのだろうか。
ピロンッ
あ、また鳴った。
「うーん。むにゃむにゃ……」
綾間さんのスマホの通知音が気になるのだけど気持ちよさそうに眠っているところを起こすのも悪い気がするので、俺は気になる通知音から気を紛らわすために一階へ降りた。
リビングのソファーに座るとテーブルに置いてあるリモコンを取りテレビの電源を付ける。
早朝五時半ということもあってかどのチャンネルも興味の湧かないものばかり。最近の若者はみんなスマホばっかり見ているけども俺はテレビも観るし本だって読む。本と言ってもライトノベルばかりなんだけど。
朝のラジオ体操番組を付けたままスマホを突き着信を確認していると階段を降りてくる音が聞こえてきた。
リビングのドアが開くと部屋着に着替えた綾間さんが目を擦りながら入って来る。
「幸太くん……おはよう」
「おはよう」
綾間さんはキッチンの方に行き電気ポットに水を入れる。
ポットがカチャっと音を鳴らすとコップに粉を入れてお湯を注ぐ。
俺の家のキッチンを元人気NO1アイドルが使っている。幸せ過ぎかよ。
オシャレなキッチンを美少女が使用するとその聖域が幻想的に見える。
小鳥とか飛んできそう……。
「幸太くん? あぁ、私のこと見て見惚れてましたなぁー?」
「そ、そんなわけ……」
からかってくる綾間さんに俺は抵抗できない。言っていることが間違ってないから。
「そ―いえば朝、綾間さんのスマホに着信が沢山入ってたけどどうしたの?」
「あぁ、あれね。メンバーのミツハと
「え! すごぉ」
ミツハと莉というのは綾間さんが所属していた人気アイドルグループ『MIXトラップ』のメンバーだ。
MIXトラップは武道館やスーパーアリーナでもライブができる程のアイドルグループ。実を言うと俺も一時期少しだけハマっていた。
そんな国民的アイドルグループの元メンバー綾間凪咲はグループで一番の人気を誇っていた。なのになぜ彼女は高校生という若さで引退発表をしてしまったのか……。
「じゃあ、他の芸能人にも友達や知り合いとかいるの?」
「うん。お陰様でLINEの友達数も千人超えなんだー」
「千人!? そんないるんだ……」
俺は一瞬端末の容量のことを心配してしまった。
「幸太くんは友達何人?」
「俺は……七人。家族と陽太くらいだからね」
「そっかー。でも私だって最初は十人とかしかいなかったからね!」
気を使ってくれるのは嬉しいんだけど、なんか辛い……。
「じゃあ、交換しようよ。これから絶対必要になるだろうし」
「あ、うん」
俺は綾間さんにQRコードを提示して読み取ってもらう。
ピロンッ
あっ……。初めて女子と連絡先を交換した。
それも日本一可愛いと言っても過言ではないS級美少女と。
「幸太くんの嫁だから当たり前だよね!」
なんだか、これから始まる新婚生活(仮)に少し期待が持てた瞬間だった。
◆
「なぁなぁー。綾間凪咲って許嫁いるらしいぜー」
「へっ!?……。そーなんだ、珍しいな」
それ俺なんだけどな。言えるわけないけど……。
――俺はあの後、陽太に誘われて近所の図書館に来ていた。
この辺りではわりと有名で大きな施設。俺も陽太も小さい頃よくきていた思い出の場所でもある。
「あぁー、美少女と付き合いてぇえええ!!!」
「お静かに!」
「あ、すみません……」
図書館の司書の人に強めに注意を受ける。
なんか俺も悪いみたいな感じになってるんだけど。
ピロンッ! ピロンッ!
「ん? お前、社長父さんからメールか?」
「え、あぁ。そんなところ……」
綾間さんからの初めてのメール……
内容は『ご飯作って待ってるからね』というもの。
「夫婦みたいじゃねーーかぁあああ!!!」
「お静かに!!!」
陽太よりも声を張り上げて司書さんにまた叱られた。
すると綾間さんからなぜか『ドンマイ』という知らないキャラクターがニヤぁと笑ったスタンプが送られてきた。
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