第38話
獣人の特性で、もう一つ、初めて知ったこと。
同じ獣人でも、種族が異なると婚姻はできない。これは子供が生まれないからだそうだ。ただし、種族が異なっても番同士の場合は、出産が可能なのだとか。そして、子供は力の強い方の種族が反映されるらしい。
だから、中には婚姻は結ばずに、いわゆる事実婚のような者もいるにはいるそうだ。しかし、それでも番が現れてしまえば、関係を解消するのがほとんどだとか。
その話を聞いて、パティはヘリウスとの事実婚を考えてるんじゃないか、と思ってしまう。それくらい彼女は本気っぽかったし、私への敵対心は酷かった。
そう言っても、ヘリウスにはピンとこないらしい。どうもパティは子供の頃からヘリウスに纏わりついていたらしく、彼女の甘えっぷりには違和感を覚えなかったらしい。あれが普通って、やっぱり獣人っておかしい。
「ばっかじゃないの?」
「そうは言ってもな」
「魔の森での移動中は、みんなの手前、気を使って言わなかったけど、私もキャサリンも不愉快だったのよ。飲み屋のお姉ちゃんみたいにベタベタして」
「メイ!? まさかお前、そんなところに」
「行ったことなんかないわよっ!(こっちの世界では)」
それに、そうだ。あの朝からの野暮用も。
「そうよ、だいたい、朝っぱらから、あんな、まさにヤってきましたぁ、みたいな状態で戻って来て、何もないとか、誰も信じないわよっ!」
「ヤッてきました、だと!? メイ、お前、どこでそんな言葉を」
「話を逸らさないで! 私は嫌よ。他の女とヤってきたのに、悪気もなーんもない状態で戻ってくるような男なんかっ! そんなの浮気して当然、とか思ってるからでしょ!」
「う、浮気って」
「だから、触らないでっ!」
「違うんだ、本当に違うって」
両手を広げて無実を主張するヘリウス。
こんな情けない格好の国の英雄の姿なんて、国民は知らないだろう。見せつけてやりたいわ、と苛々しながら強く思う。
「事実、ヤッていようがいまいが、そうやって見せつけるような女と行動を共にしている時点で、無理。」
「メイ! 駄目だ! もう、こうしてお前に触れて、匂いを嗅いで、お前のことを知ってしまったら、我慢なんか出来ない! お前がいないことに気付いた瞬間の、あの恐ろしい程の消失感、あんなのは二度と耐えられん!」
今度は思い切りタックルされて、ベッドに引き倒される。
「ちょ、ちょっと、嫌、嫌だってばっ! 離れて、離れてよ、離せっ!」
背中を思い切り叩いて、お腹を蹴ってもビクともしない。
「ぐっ、な、殴られようと、蹴られようとも、嫌なもんは、嫌だぁぁぁっ」
どこの駄々っ子よ!
「はぁ、はぁ、はぁ、あんた、最低」
「メ、メイ?」
身体の力を抜く私。それを、私が諦めたとでも思ったのか、情けない顔で見上げてきたヘリウス。
そう、最低なのだ。まだ14歳の私の身体に抱きついて、欲情している、この男。固くなった男性自身の存在感が、私の脚に当てて自己主張している。
「ホントッ最低っ!……自業自得よっ!」
「えっ……ぎゃぁぁぁぁ!」
……オホホ。思い切り、蹴とばしてやりましたわ! どこって? フフフ、ご存知のところに決まっているでしょ。
ざまぁみろ!
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