第22話
それから私たちは、現状の確認と今後の動き方について、じっくり話し合った。
モンテス伯爵領を西に横断していくのが、一番の近道ではある。ただ、途中にある王家の直轄地に、すでに私たちの捕縛の連絡がいっている可能性が高い。まだ正式な婚約発表前だから、私の姿などわからないかもしれないけれど、万が一があったら、怖い。
もう一つ、ウルトガ王国を経由して行く道もあるにはあるが、辺境伯領とは接していないために、ぐるっと回り込んで、あまり仲がよくないナディス王国を通らないといけない。
「あとは……王族権限でも使うか」
「お、王族権限?」
「ん? ああ、どこの国も王城内には転移の間があるのは知っているか?」
「あ、あ、はい」
そうなのだ。あまり頻繁に使われはしないけれど、国家間での交渉などの時に、転移の間を使われることがある。あまり大人数では使えないのと、相互に設定していないと受け入れられない、魔力を多く使うなどもあって、頻繁に使われないので、一般には知られてはいないのだ。
「たぶん、辺境伯の城の中にも、転移の間があったと思うのだが」
「えっ!? そうなのですか!?」
聞いてないよぉ。
もしかして、あれ? 王国内とかって、転移で移動とか出来たりするの!?
「まぁ、基本、国境にある辺境伯の城だけだろうがな」
ということは、王都周辺の侯爵領みたいなのはないのかしら。
「では、王家直轄地は」
「普通なら、ないね」
それを聞いて、ちょっとだけホッとする。追手が転移とかで来られたら、こんなに頑張って逃げて来たのに、目も当てられない。
「メイ、忘れてないか」
「はい?」
気の抜けていた私に、ヘリウスは爆弾を落とした。
「ウルトガとの国境にも辺境伯がいることを」
がーん。
そうだった。辺境伯と呼ばれるのは、何も我がゴードン辺境伯だけではないのだ。ウルトガ王国と接しているところにも辺境伯は置かれている。
――もしかしたら、王家に先回りされてる可能性もあるということ。
私は必死に、頭の中で我が国の地図を思い描く。
そういえば、モンテス伯爵領の北に位置するのは、エドベア辺境伯領。エドベア辺境伯は、お祖父様とは違い、武よりも文という感じ。どちらかというと中立派。国王様よりも王妃様の方に寄っているかもしれない。
「まぁ、あいつらがそこまで頭が回るかどうか、わからんがな」
うん、王太子は馬鹿だから、無理だよね。そう心から願う。
「しかし、万が一、があるかもしれん。辺境伯側からと王都側からと、大勢で挟み撃ちにされたら、さすがの俺でも守り切れんかもしれないからな」
「そ、そんな」
「だから、一旦、脇道にそれるぞ」
「脇道?」
そう言われて首を傾げる。このモンテス伯爵領からウルトガ王国を繋ぐのは街道一本のみ。脇道にそれると言われても、道などないはず。
「わざわざ街道なんかを馬鹿正直に使うことはない。だいたい、国境を越えることが出来る場所など、国境の門以外にもあるじゃないか」
「……まさか」
ヘリウス様が悪そうな顔でニヤリとする。
「魔の森を抜けて、オイデス山を越える」
私はその言葉に、唖然とした。
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