第43話
そして、やはり獣人同士というのはスキンシップが多いらしい。
それが相手が人族となると、逆に気を遣うモードに入るらしいんだけど。私は宿屋でのことを思い出し、白い目になる。
「全然、気を使われてなかったと思うけど」
「メイ、番には無理だ」
パコーンッ
「言い切るな」
「ミーシャ!?」
「まずは、メイリンの話を聞け」
そして、私は思い出し、目を瞑る。
「例え、獣人同士のスキンシップが多かろうとも、そういう世話をしてやっていたのであろうとも、番……人族でいうなら、恋人や妻になるような相手に見せつけるようなものでは、ないのでは?」
「み、見せつけるなど、あれは子供の頃から面倒を見ていてだな……それに」
困惑気味に言い訳するヘリウスに最後まで言わせずに、私は白い眼を向ける。
「あの猫女が、どんだけ貴方にまとわりついても、剥がしもしないし、私の方を振り向きもしなかった。しかも、あの猫女は私たちに向かって不遜な態度をとっていたというのに、注意もしない。不愉快を感じさせるには十分でしたわ。はっきり言って、私には、貴方は護衛ではなく、単に飲み屋の女を連れて歩いてるだけにしか見えませんでしたわ」
私の言葉に、部屋の中は無音になる。
「さてと、ヘリウス」
「……」
「その猫女は、今はどこに」
「……あ、ああ、宿では隣の部屋にいたはずだが」
「あんなに騒いでたのに、顔も出さなかったけど」
「寝てただけじゃ」
「……斥候なのに?」
思わず、ヘリウスの言葉に、言い返してしまう。
「斥候って、敵を見つけたりするのに、敏感なんじゃないの」
「そりゃ、そうだが……ちょっと待て」
ヘリウスがどこかに伝達の陣で小さなメモを送った。すぐに返事がきたと同時に、ヘリウスは驚いたように目を見開く。
「なんだって」
「……昨夜からいないらしい」
「昨夜って」
「最初に宿に着いた時には一緒にいたんだ。メイを俺の部屋に連れていった時、キャサリンには、パティと同じ部屋に行くように言ったんだが」
「キャサリンに確認する」
母が立ち上がり、外にいる誰かと話をしている。
……キャサリンか。彼女に向かって放った言葉を思い出し、私は少しだけ後悔する。それでも、彼らに私を渡した彼女を、まだ許すことはできない。
「キャサリンは知らないと言ってるな。言われた部屋には結局入らなかったらしい」
「なんだと」
「お前が信用ならなくて、外で警護していたんだと。証人はお前のパーティメンバーの男たちだ」
母の言葉に、ヘリウスは悔し気。
「パティはどこに行ったのかしらね……まさか、トーレスの王都になんて、馬鹿なこと、してないといいんだけど」
「そんなはずは」
言葉を重ねて言う母に、否定しようとするヘリウス。必死に猫女を庇おうとしている姿に、再び、怒りが湧き上がってくる。
「……ないって言える? あれだけヘリウスに執着してたのよ。所詮、アレも女ってことよね。仕事よりも、ヘリウスを想う気持ちを取ったってことじゃないの? ああ、嫌だ、嫌だ」
「メイリンちゃん……ちょっと、落ち着こうか」
「ミーシャだって、そう思うでしょ? そもそも、40にもなる男が、10代の娘に手を出すとか、ロリコンよ、ロリコンッ!」
叫ぶ私の最後の言葉に、母とヘリウスは首を傾げ、ミーシャはピシリと固まった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます