第2章 初めてのケモミミ!?
第6話
王都内の屋敷に戻ると、玄関フロアでお祖父様が驚いた顔で迎えてくれた。
「メ、メイリン!? いかがした!」
「お祖父様、私、婚約破棄してきましたわ」
お祖父様を通り越して、自分の部屋へと足早に向かう。
「……こ、婚約破棄だと!?」
「ええっ!」
私の後をついてくるのはマーサにキャサリン。その後をお祖父様が慌ててついてくる。
「本当にいいのかっ」
「ええ、いいの。もう、あんなの、愛想がつきましたわ」
お祖父様の足が止まる。
「あ、あんなの? ……おい、マーサ、メイリンはどうしたというのだ」
後ろで何やら話し出したようだけど、私は気にせず、どんどん進む。
自分の部屋のドアを開けて、クローゼットへと向かう。
勢いよく開けて、身動きしやすいような服がないかと、目の前にあるドレス類をかきわけていくと、一番奥の方にあった乗馬服を見つけた。
紺色のジャケットに白いパンツ。着るかわからないのに、母が持たせてくれた物だったのを思い出す。
記憶が戻る前のメイリンは、伯爵令嬢としてドレスでの生活が当たり前ではあったが、幼い頃に、辺境防衛隊の隊長でもある母、ファリアから乗馬の手ほどきも受けていた。
正直、当時のメイリンは苦手意識のほうが強くて、上手とはいえなかった。
しかし、今の私は違う。
転生前、趣味で乗馬クラブに通ってたのを思い出したのだ。離婚した後だけど。なーんで、あんなに馬が苦手に感じてたのか、今では不思議でならない。
ドレスを自力で脱いで、白いシャツに乗馬用のズボンを履いていると、部屋のドアが勢いよく開いた。
「メイリン! あの男は、やはり駄目だったかっ!」
「お祖父様! 私、着替え中です!」
「す、すまんっ!」
たまたまクローゼットのドアの影になってたからいいものの、いきなりレディの部屋に入ってくるなんて。
お祖父様は慌てて部屋の外に出て、メイド長に怒られている模様。
マーサがクローゼットを覗き込んでくる。
「メイリンお嬢様……お手伝いいたします」
「マーサ、大丈夫。もう、着替え終わるわ」
「……その格好は」
姿見に自分の格好をチェックする。
濃いめの化粧は、今更なおしようがない。髪型が、若干ゴージャスに結われているのが、違和感ありまくりだけど、これも気にしている時間はない。ジャケットの袖に腕を通して、クローゼットから出る。
目の前には、珍しくオロオロしているお祖父様。
「お祖父さま、ワイバーンはおりますか」
「はっ!? ワイバーンだと?」
「ええ、王都から逃亡しますから」
「なっ!? と、逃亡だと? いや、お前に夜間飛行は無理だろっ! そもそも、今日は出払っておるから無理だ」
なんてタイミングの悪い。思わず顔を顰める。
「仕方がありませんわね……お祖父様、後始末はお任せしても?」
「あ、ああ……い、いや、それよりも、お前、その格好」
「キャサリン、厩舎で足の早いのを出してもらうよう指示して。マーサは馬車の準備を。私の荷物は馬車に載せて辺境伯領の方へ移動して頂戴。私は馬で戻るわ」
「メ、メイリン!? お前、馬は苦手じゃ」
お祖父様が驚いた顔で、後をついてくる。
まぁ、そうよね。散々、深窓のご令嬢って感じだったわけだし。
私はくるりと振り向き、ニッコリと微笑む。
「いえ、もう、苦手ではございませんわ。とにかく、一分一秒、この王都にいるのは嫌なのです。護衛はキャサリンのみで結構。馬車の方にマーサのために数人つけてください」
「かしこまりました。お嬢様」
驚きで固まるお祖父様をよそに、執事のポールが恭しく頭を下げる。
「頼むわよ」
そう声をかけると、一気に階段を駆け下りた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます