第16話

 私とキャサリンは、宿の女将さんに教えられた、町の南側にある出入りの門のそばにある冒険者ギルドに向かった。

 なんとなく、ギルド、という響きに、すごい大きな建物を予想してたのだけれど、まったくの正反対。なんか、役所の出張所的なこじんまりした建物で、私もキャサリンも、呆然としてしまった。


「おい、嬢ちゃんたち、用がないなら邪魔なんで、どいてくれないかい」


 そう声をかけてきたのは、ちょっと品のいい感じの老人。どこかの商人か何か、というところだろう。その後ろを、立派な体格のお兄さんたちが二人、立っている。護衛だろうか。


「すみません」

「いやいや」


 慌てて避けると、老人がドアを開けて中に入っていく。護衛のお兄さんたちは、小さく頭を下げて、老人の後をついていく。やっぱり、雇い主が品がいいと、護衛もそれなりにしっかりした人がつくのだろう。

 私とキャサリンは、彼らの後をついていくように中に入る。少し狭い、受付のカウンターには、窓口になるのか、おじさんとおばさんの二人のスタッフが座っている。先程の老人たちはカウンターではなく、奥の部屋に入っていくらしい。


「ご依頼ですか?」


 おっとりした感じのおばさんが、私たちに声をかけてきた。私はおばさんのいる受付に向かうと、冒険者の登録をしたい旨を伝える。


「おやおや、お嬢さんたちがですか?」

「はい、お願いします」


 彼女の言葉に、私もキャサリンも、どう見ても冒険者っぽくはないというのを、今さらながらに気付く。しかし、今はそんなことを言ってる暇はない。おばさんは、一瞬、考えたようだけれど、無言のまま、紙を二枚差し出した。


「こちらの書類に必要事項をお書きください」


 渡された紙をじっくり読む。昔取った杵柄、というわけではないが、契約書の類はきちんと読んでおかないとね。一方のキャサリンは、さらっと読んだだけで、すぐにサインしている。それでいいの? と思ったが、私がちゃんと読んでおけばいいか、と、一人で勝手に納得しとく。

 一通り読んで、必要事項を書き込んでいく。名前のところは、そのまま書いてしまうわけにもいかないだろう。庶民には苗字はないと聞くから、メイ、でいいか。


「はい、えーと、メイとキャサリンね。ちょっと待っててね」


 おばさんはカウンターの奥の方に行くと、何やら大きなコピー機みたいな機械をいじってる。え、この世界にコピー機なんかあるの!?

 びっくりしている私をよそに、そのコピー機はピカッと光ったかと思ったら、おばさんが薄い鉄製のカードを2枚持って戻って来た。


「はい、こっちがメイので、こっちがキャサリン」


 表に『メイ』と恐らく冒険者のランクの『G』と書かれたカード。あちらのドッグタグよりは少し大きいカードを、しげしげと見る。どうやって、あのコピー機から出て来たのか、すんごい不思議だ。


「それはギルドカードになります。クエストを受けて達成すると、その裏のツルツルの面に実績が載ります」


 へぇ……と感心しながらも、自分がクエストをこなすイメージはわかない。


「それと、一応、ギルドではお金を預かる仕組みもありますので、高額な場合はそちらで受け取ることもできますよ」

「え、それって、もし、今現金があったら預け入れも出来るんですか?」

「はい。可能です」


 もしかして、それだったら!

 思わず、カウンターに身を乗り出しておばちゃんに問いかける。


「あの、もし、相手先がわかったら、送金することも……」

「できますよ」


 よっしゃ~!



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