第2話
私の叫び声で集まった者たちは、私が目にしているモノを見て、目を真ん丸にして驚いている。
「メイリン?! な、なぜ、ここ、ここにっ」
「きゃぁぁぁぁぁっ」
素っ裸でベッドから降りてくるアルフレッド様。さっきまで頑張ってたナニは、むしろ縮こまって、見る影もない。マリアンヌも、まさか、こんな大勢に裸を見られるとは思ってもいなかったのだろう。真っ青になって、ベッドのカバーで身を隠そうとしている。
――何を今さら。
私に二人の関係を見せつけて、身を引かせようとでも思ってたんじゃないの?
「お、王子っ」
従者の誰かが、慌ててガウンをかけようと駆け寄ろうとして、アルフレッド様が自分の今の格好に思い至る。
「あ? ああっ!」
声をあげて慌ててガウンを受け取るアルフレッド様。
思わず、「ダサー」っと声に出てしまったけど、誰も、言葉の意味には気付いていない模様。むしろ、私の冷静な様子に、引いているみたい。すんません。中身、28歳なんで。10代のお猿さんには興味ないっす。
「メ、メイリン? えと、あの、これはだな……そ、そう、ね、閨の勉強中なのだ。うん、こうやって、お前の為に学んでいるのだ」
「……はぁ?」
つい、出ちゃいました。下から見上げるような「はぁ?」が。
そんな私にびっくりしたように固まるアルフレッド様。そりゃ、そうよね。さっきまでの私だったら、こんな態度なんてとらなかった。
辺境伯であるお祖父様に溺愛されて、何不自由なく暮らしてきた深窓の令嬢だったメイリン。王都に連れてこられて、夫に尽くすように育てられてきた大人しいお姫様が、こーんな不良みたいな反応、するわけがなかった。前世の記憶が戻ってこなければ。
たぶん、婚約者と親友、その二人の繁殖行為がショックだったのだろう。
そうでもなければ、こんなこと、起こり得なかったはずだ。
「メイリン?」
おどおどと声をかけてきたのはアルフレッド様のほうで、私は鼻で笑ってやった。
「いい大人がみっともない。アルフレッド様、申し訳ございませんが、この婚約、なかったことにさせていただきます」
「メイリン!?」
「どうぞ、『愛してる』マリアンヌと、お幸せに」
「メイリン! 違う、アレは、そういうんじゃないんだっ。私が愛してるのはメイリンだけでっ」
私に駆け寄ろうとするアルフレッド様に、ベッドにいるマリアンヌが鬼のような形相に変わる。
「酷いっ! アルフレッド様!」
「黙れっ、痴れ者がっ」
「言って下さったじゃありませんかっ! 私を側妃にしてくださるとっ!」
……あ~あ。
アルフレッド様の顔色が一層悪くなる。
そりゃ、そうよね。
私との婚約の条件、忘れてないなら、そうなるわよね。
『側妃は結婚から10年間は置かない。10年の間に王子が産まれなかった場合のみ、側妃を認める』
この状況、婚約する前から破ってるってことだよね?
結婚できなくて困るのは、アルフレッド様の方。
……だって、この方、王太子とは言え、王家の血筋じゃないんだもの。
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