第6話 放課後
そのまま、午後の授業を終え、二人並んで下校する。
「兄さんって、女の子のお友達たくさんいるんですね」
「まあ、書道部って女社会だからなぁ」
「ふーん、そうですかそうですか」
紗良は、なぜか拗ねたような表情をしていた。
「何か、怒っているか?」
「別に、怒ってませんけど」
プイっと反対の方向を向いてしまった。
女心は難しいものだ。
「そうか? ならいいんだけどさ。そうだ、晩飯どうする?」
「晩ご飯、ですか?」
「帰って少しゆっくりしたらもう、晩飯の時間だろ?」
「確かに、そうですね」
俺はいつも18時過ぎには夕食を取っていた。
1人の時は、コンビニとかラーメン屋とか、適当に食べるのだが、紗良も一緒ならそうもいかないだろう。
「外食でもいいし、スーパーに寄って、家で作ってもいいよ」
「そうですね。兄さんの負担もありますから、今日は外食にしましょうか」
「おう、ありがとう。とりあえず、帰るか」
「はい!」
二人は、並んで、家までの道のりを歩いた。
他愛もない話をしながら歩くこと数分、家の前まで着いた。
「あ、すまん。紗良に渡すの忘れてた。これ、うちの鍵」
そう言って、俺はポケットから合鍵を取り出し、紗良に渡した。
「あ、ありがとうございます」
「おう、いつも一緒に帰って来れるとは、限らないからな」
「そう、ですね……」
紗良は、少し、寂しそうな表情を浮かべた。
「紗良? どうかした?」
「い、いえ、何でも」
俺は、自分の鍵で玄関を開けると、紗良を先に中に入れた。
「では、私は着替えてきます」
「おう、俺も着替えるよ」
そう言うと、それぞれ、自分の部屋へと入って行った。
「さてと」
俺は、ブレザーとシャツを脱ぎ、適当にクローゼットを漁る。
結局、紺のシャツに、グレーのスキニーパンツにした。
普段から暗めの色のワイシャツを着ることが多い。
着替え終わると、階段を降り、リビングへと向かった。
「紗良はまだか」
女の子なので、着替えにも時間がかかっているのだろう。
リビングのソファーに腰を降ろすと、テレビを付けた。
「兄さん、お待たせしました」
「おう、気にしなくていいぞ」
振り向くと、薄いピンク色をした、ゆったりとしたワンピースを着た紗良が立っていた。
その姿に、思わず見とれてしまう。
「兄さん? 変、ですか?」
紗良が心配そうな視線を送って来た。
「い、いや、可愛いぞ。凄く似合っている」
「そうですか。う、嬉しいです」
紗良の表情が一気に明るくなった。
「さて、じゃあ、出かけるか。駅前に行けば、何かしらあるだろう」
「はい!!」
時刻は、17時を少し過ぎたころだ。
紗良は、小さな白い鞄を肩にかけると、出かける準備は出来た様子だ。
俺も、財布とスマホをポケットしまうと、テレビを消した。
「兄さんは、荷物はいいんですか?」
「男は、意外と鞄持たなくても平気なんだよ。飯行くだけだしな」
「そういうもんなんですね」
「うん」
俺は玄関まで行くと、いつものスニーカーを履き、家を出た。
紗良は白いサンダルだ。
二人は、並んで、駅前まで歩き始めた。
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