第19話 嬉しい知らせ

 家に帰ってくると、お互い、部屋着に着替えるべく、自室に戻った。

俺が、一足早く、着替えて戻ると、手を洗って、買って来たハンバーガーセットを、リビングの机の上に並べていた。


「おう、紗良も着替え終わったか。手、洗ってきな」

「はい、そうします」


 紗良も洗面所の方に向かい、手を洗いに行った。

すぐに、洗面所から、紗良は戻ってきた。


「じゃあ、食べようか」

「はい!」


 リビングのソファーに座り、ハンバーガーの包み紙を開けた。


「うん、久しぶりに食べたけど、美味いな」

「私も、久しぶりです」


 ハムハムと、隣でハンバーガーを食べる紗良。

幸せそうだ。

そして、可愛い。

思わす、抱きしめて撫で撫でしたくなる。


「なんだかんだで、疲れたな」

「連れまわしてしまってすみません」

「いや、構わんよ。それ以上に楽しかったから」

「良かったです」


 俺は、セットのドリンクのコーラを飲んだ。


「私も今日は、凄く楽しかったです」

「そいつは何よりだ」


 他愛もない話をしながら、二人はハンバーガーを完食した。


「うまかったな」

「はい、これ、たまに食べたくなりますよね」

「うん、そうなんだよ。たまに食べたくなるよな」


 ゴミをゴミ箱に放り込むと、リビングのソファーに戻る。

テレビでも付けようと思ったその時、俺のスマホ振動した。


「お、電話だ。珍しいな」


 スマホの画面を見ると、『編集部』と表示されていた。


「編集部、こりゃまた珍しい所から。悪い、ちょっと電話してくる」


 紗良にひと言、断りを入れてから、俺はリビングの隅に移動した。


「はい、もしもし」

『あ、東條先生、お世話になっております』

「こちらこそ。それで、何かトラブルですか?」

『いえ、東條先生の仕事は完璧です。実は、一つご報告したいことがありまして』

「報告、ですか」

『はい、魔法学院の最強賢者のアニメ化が決まりました』

「え、、、」


 編集部からの電話は嬉しい報告だった。


『それで、先生にはアニメで使う文字を全て依頼したいと思いまして』

「構いませんが、忙しくなりそうですね」

『ええ、原作の小田霧先生も、忙しくて死にそうな顔をしていましたよ』


 担当編集は笑いながら言った。


「笑いごとじゃないですね、それ」

『はい、それでは、詳しいことはまた連絡します』

「はい、お願いします」


 そう言うと、電話は切れた。


「ああ、すまんすまん」


 電話を終えると、紗良の方に向き直った。


「兄さん、お仕事の依頼ですか」

「ああ、例の『魔法学院の最強賢者』のアニメ化が決定した」

「おめでとうございます! 兄さん」

「それは、小田霧さんに言ってほしいよ。あ、これ、まだ秘密な」

「もちろんです」


 紗良は微笑みを浮かべた。


「ああ、忙しくなりそうだなぁ」

「大変ですね」

「まあ、好きでやっているからいいんだけどな」


 俺はテレビを付けると、ソファーに身をゆだねた。

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