第36話 映画デートの朝

 2日後、紗良と映画に行く約束をした当日となった。


「はぁ、眠たいな」


 午前9時過ぎ、眠い目をこすりながら起きだした。

昨日、夜遅くまで作業をしていたことが原因だろう。


「おはようございます」

「おはよう。休みなのに早いな」

「はい、なんか、目が覚めちゃって。兄さんは、眠そうですね」


 紗良が、春輝の顔を見て言った。


「悪いな。昨日、ちょっと遅くまで作業しててな」

「お疲れ様です」


 紗良が、マグカップに注いだコーヒーを手渡してくれた。


「お、ありがとう」


 マグカップを受け取ると、一口飲んでリビングのソファーへと移動する。


「飯、外で食ってから行くか」

「そうですね」

「俺、回転寿司とか行きたい」

「賛成です」

「よし、じゃあ、決まりだな。顔洗ってくる」


 春輝は立ち上がって、洗面所に向かう。

顔を洗うと、リビングに戻ってきた。


「10時くらいには出たいよな?」

「はい、そのくらいがいいと思います」

「じゃあ、着替えるか」

「はい!」

 

 お互い、部屋に戻ると、お出かけ用の服に着替える。

春輝は、前に紗良に買ってもらった、白のTシャツに紺のジャケット、黒のデニムを履いた。

紗良は、春輝のデートの時に買った、紺のブラウスにピンクのスカート、黒のカーディガンを羽織った。


「やっぱ、兄さんは、まともな服を着るとカッコイイですよね」

「何だその、普段はまともじゃないみたいないい方は」

「まあ、そうなんですけど」


 紗良は、苦笑いした。


「紗良も可愛いよ」

「ふふふ、ありがとうございます」

「さて、出かけるか」


 時計を見ると、10時を回っていた。


「行きましょう」


 春輝は、ポケットにスマホと財布を仕舞った。


「おうよ」


 二人は、玄関を出ると駅に向かって歩く。


「確か、映画館の最寄りの駅に回転寿司にのチェーン店があったはずだから、そこで飯にしようか」

「了解です」

「悪い、ちょっとチャージしてくる」

「あ、なら私も」


 駅に着くと、交通ICカードの残高をチャージする。


「これで、大丈夫だな」


 そのまま、改札を通ると、電車が到着するのを待つ。

3分も待つと、電車がやって来た。

中途半端な時間ということもあってか、電車は比較的すいていた。


「お、座れそうだな」

「そうですね」


 二人は横並びで座ると、3駅ほど電車に揺られた。

電車を出ると、食事をするため、回転寿司のチェーン店に向かった。


「ここでいい?」

「はい!」


 店内に入ると、タッチパネルで2名を選択し、テーブル席を選択した。

すぐに、発券され、券に書かれた番号の席に向かった。


「どうぞ」

「ありがとうございます」


 紗良を奥の席に座らせると、おしぼりを渡した。

自分の分と紗良の分のお茶を作ると、一つを渡した。


「好きなのを頼んでくれ」

「はい!」


 紗良は笑顔で頷いた。

回転寿司くらいでその笑顔を引き出せるのなら安いものだ。

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