第22話 カレー作り

 俺と紗良は、キッチンに並んで立っている。


「兄さん、私は何をすればいいでしょうか?」

「そうだねぇ。野菜の皮を剥いてもらおうかな」

「分かりました!」


 そう言って、冷蔵庫の中から、カレーに使う野菜を並べていく。


「ピーラーはそこにおいてあるから、使ってくれ。手、気を付けてな」

「はい!」


 紗良は、器用に野菜の皮を剥いていく。

その間に、春輝はまな板に包丁、鍋など、料理で使う道具たちを準備していく。


「兄さん、皮、剥き終わりました」

「おう、ありがとう。切るのは俺がやるから、火を付けて鍋温めておいて」

「はい!」


 そう言うと、俺は器用に野菜を切って行く。

野菜を切り終わったところで、鶏肉を切る。


「兄さん、お鍋、温まりましたよ」

「おうよ」


 鍋に油をひき、最初に玉ねぎを突っ込む。

それが、きつね色になってきたら、鶏肉、その他の野菜突っ込んで、炒めていく。


「紗良、火、弱めといて」

「はい!」


 一通り、火が通ると、水を入れて、沸騰するまで待つ。


「中火くらいでいいかな。しばらく、暇になるよ」

「はい。兄さん、毎日やってくれていたんですね」

「まあ、時間がかからないもんばっかだったけどな」


 そんなことを話しているうちに、沸騰した。

そこから、更に10分ほど煮込んでいく。


「一回火を止めるぞ」


 煮込んだら、一度火を止め、カレールーを入れる。


「よし、これでもうしばらく煮込んだら完成だぞ」

「おお、いよいよですね」


 いつもは、一人で黙々とやる料理だが、紗良と一緒に作るのは、随分と楽しく感じた。


「完成だ!」


 そこから、数分後、カレーが完成した。

それとほぼ、同時にご飯が炊きあがる音がした。


「お、ご飯も炊き終わったみたいだな。すぐ食べるか?」

「いえ、もう少し経ってからで大丈夫です」

「おう、じゃあ、ちょっと休憩するか」


 二人は、鍋の火を止めたことを確認すると、リビングのソファーに移動した。


「この時間っこんな番組やっているんだな」


 紗良がテレビを付けていた。

そこには、アニメが流れていた。


「兄さんが文字を担当するアニメもこの枠ですよ」

「え、そうなの?」

「はい、昨日、公式が発表していました。兄さんの名前も載ってます」


 そう言って紗良がスマホの画面を向けてきた。


「本当に載ってるし。担当編集から何も聞いていないぞ」


 紗良のスマホに映しだされた、アニメの公式ページには、題字担当として東條零と書かれていた。

ちなみに、零というのは、春輝のペンネームだ。


「兄さん、零って言うんですねえ」


 紗良がニヤニヤしている。


「べ、別にいいだろ?」

「カッコイイと思いますよ」

「お、おう。ありがとう」


 俺もスマホでTwitterを開くと、たくさんのメッセージが来ていた。


「あ、本当に発表されたんね」


 その時、小田霧さんからの返信が来た。


『ありがとう。アニメもよろしく』


 返信が三日後ということは、相当忙しいのだろうと察しがついた。

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