第61話 夏休みの終わり
長いようで短い夏休みが残り一日となっていた。
俺たちは、課題をギリギリまで溜め込むタイプではない。
計画性を持って課題を終わらせていた。
「明日からまた学校かぁ……」
俺がリビングのソファーに身をゆだねて言った。
「何か、色々ありましたけど、早かったですね」
「ああ、そうだな」
まだ、明日から学校という実感が薄い。
いや、現実から逃げたいのかもしれないが。
「課題、終わっているんだよな?」
「ええ、私は終わっています。兄さん、まさか?」
紗良は疑いの目を俺に向けてきた .
「いや、俺も終わってるから。心配すんな」
「それならよかったです」
紗良がホッとしたような顔を浮かべていた。
「映画でも、借りに行くか?」
夏休みの最終日ということで、どこかに遊びに行こうかという気にもなれない。
こういう日は、家でまったりするに限る。
「いいですね! 行きます!!」
紗良は、目を輝かせていた。
そんなに喜んでくれると思っていなかった俺としては、予想外の反応だった。
しかし、そんな表情も可愛いのは反則ではないだろうか。
「じゃあ、準備してくる」
「私も」
一旦、それぞれんの部屋に戻る。
ちょっと出かけるくらいなので、ラフな格好でもいいだろう
「これでいいや」
俺は、以前、紗良に買ってもらったTシャツに黒のスキニーパンツを履いた。
ちょっとそこまで映画を借りに行くだけだ。
こんなもんだろう。
「お待たせしました」
先に着替え終わった俺がリビングで待っていると、紗良も着替え終わって、階段を降りてきた。
「おう、気にしなくていいぞ」
紗良は、薄いピンク色のワンピースに白い鞄を手に持っていた。
予想はしていたが、やはり可愛い。
「ほんじゃあ、行きますか」
俺は、財布とスマホをポケットに突っ込むと、家の鍵を持って外に出た。
「はい!」
紗良も、サンダルに履き替え、玄関を出る。
玄関の鍵を閉めたことを確認すると、歩き始めた。
「どこまで行くんですか?」
隣を歩く紗良が聞いてきた。
「駅前のレンタルDVDショップだよ。会員登録してあるし」
俺がいつも使うチェーンのレンタルDVDショップである。
会員登録はしているので、気軽に使うことが出来る。
「へぇー」
隣を歩く紗良がニコニコとしている。
「はい、ここ」
それから、10分くらい歩いただろうか。
レンタルDVDショップの前に到着した。
「入ろうか」
「はい」
俺たちは、店内へと入った。
そこには、新作から古い映画まで、ずらっとDVDが並んでいる。
「おぉ、凄いですね」
紗良のテンションはいつもより少し高い気がする。
「紗良は、あんまり来ないの?」
「そうですね。いえであんまり映画を見なかったので」
そんなことを話しつつ、店内を物色し始める。
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