第49話 出版のお話し

 朝桐が対面に座った。


「私、先生の文字のファンで、担当になれて嬉しいです!!」

「あ、ありがとうございます」

「SNSも、フォローしてて」


 朝桐が食い気味で話してきた。


「朝桐さん、憧れの東條先生に会えたのは分かるけど、お仕事の話もしようね」


 笹井に言われ、朝桐は我に返ったようであった。


「は、すみません。私、テンション上がってしまって」

「いいんですよ。ファンなのは嬉しいですから」

「ありがとうございます。それで、先生に出版の意思はありますか」


 朝桐が仕事モードに戻っていた。


「まあ、興味はありますけど、どんなラノベを書けばいいかとか、全然分からなくて」

「そうですね、今の流行りだと、異世界ものですかね」


 朝桐が、自社で出版しているラノベのポスターを指さして言った。


「例えば、先生は書道家さんですから、書道家が異世界に転生して、無双するお話とか、先生の書きたいと思う内容を書いてみて下さい」

「なるほど。では、アイディアをいくつか出す感じですかね?」

「そうして頂けるとこちらとしても嬉しいです」

「分かりました。考えてみます。また、忙しくなりそうですね」


 春輝は苦笑いした。


「一冊分となると、結構な文字数になりますからね」

「そうですよね。小田霧先生を見ていると分かりますよ。とりあえず、持ち帰って考えてみます」

「よろしくお願いします」


 契約など、一通りの話を終えると、出版社を後にした。


『今、終わったので帰ります』


 そう、紗良にメッセージを入れると、電車に乗った。

来た時と同じく、20分ほど電車に揺られて、自宅の最寄り駅に着くと、紗良が迎えに来ていた。


「兄さん、お疲れ様でした」

「わざわざ、迎えに来てくれてありがとうな」

「いえ、兄さんとご飯に行こうと思いまして」


 時刻は、17時を回っていた。

夕食にしてもいい時間帯だろう。


「おう、もうこんな時間か。何食べたい?」

「私は何でも」

「じゃあ、ファミレスにでも行くか」


 二人は、近くにあるファミレスに向かった。


「いらっしゃいませ。奥のお席にどうぞ」


 二人は、テーブル席に通された。


「さてさて、飲み物取り行くか」


 注文を済ませると、ドリンクを取りに向かう。


「兄さん、今日はどうだったんですか?」

「うん、何かね、小説書くことになった」

「え、兄さんかけるんですか?」

「まあ、ある程度は書けるとは思うよ」


 春輝は、コーヒーを口にしながら言った。


「また、忙しくなりますね」

「まあな。でも、出版は興味があったからありがたい話だよ」


 その時、注文した料理が届いた。


「食べようか」

「はい!」


 二人は、運ばれてきた料理を食べ始めた。



 

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