第48話 出版社からのお呼び出し

 春輝は、アニメで使用する文字デザインも大体書き上げてしまった。


「よし、あとはスキャンして送ればいいだけだな」


 データをメールに添付して、担当者編集に送り終わった。


『今回も最高です。今週の土曜日、14時に会社の方に来ていただくことは可能ですか?』


 笹井からそう返って来た。


『今週の土曜日ですね。大丈夫です。お伺いします』


 そう、返信すると、春輝はパソコンを閉じた。


「お疲れですね」

「ああ、ようやく、アニメの方の文字デザインが一段落してな」


 目頭を押さえながら言った。


「なにか飲みます?」

「いや、大丈夫だよ」


 そう言うと、春輝はリビングのソファーに身をゆだねた。


「今週の土曜日、出版社に行ってくるわ」

「そうなんですか。忙しいですね」

「ああ、用件は大事な事だから会ってから話すとさ」

「兄さんもお風呂入ってきたらどうですか?」


 紗良に促され、風呂に入ると、そのまま早めに休むことにした。



****



 土曜日、出版社に向かうべく、家を出た。


「行ってくる」

「いってらっしゃい。気をつけてくださいね」

「おう、また、夕方には帰れると思う」

「分かりました」


 紗良に見送られ、駅へと向かう。

そこから、20分ほど電車に揺られて、出版社の最寄り駅に到着した。


「東條と申します。笹井さんとお約束しております」


 受付で手続きを済ませ、編集部のある4階へ向かう。


「東條先生、お待ちしておりました。こちらへお願いします」

「はい」


 会議室に通された。


「今日は、アニメの件ですか?」

「いえ、今回は別の仕事を先生にお願いしたく、来ていただきました」

「別の仕事?」

「はい、先生は確か、文章系には強かったですよね?」


 そう言いながら、笹井は資料を広げていた。


「ええ、まあ、それなりには書けますが」

「ライトノベルを出版してみませんか?」

「え……」


 予想にもしていなかった打診を受けた。


「でも、僕、書道家ですよ?」

「だからいいんです。マホガクの題字をされている先生が、小説を書く。話題性としては申し分ないじゃないではありませんか」

「担当は、笹井さんが?」

「そうしたいのは、山々なんですが、私は手一杯でして、別の担当が付きます。呼んできますね」


 そう言って、笹井は会議室を出た。

数分後、笹井は戻ってきた。


「お待たせしました。こちらが先生の担当になる、朝桐です」

「初めまして」


 笹井が連れてきた担当者は、20代後半と思われる綺麗な女性だった。


「どうも、初めまして」


 春輝も立ち上がって挨拶をした。


「朝桐結花と申します」


 そう言って、名刺を手渡してくれた。


「東條零です」


 二人は握手を交わした。

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