第33話 紗良の看病②
春輝は急いで後ろを向いた。
「ご、ごめん。その、ジロジロ見るつもりは無くて」
「だ、大丈夫です。その、ちょっと、恥ずかしくて……」
「そ、そうだよね」
紗良は、春輝かタオルを受け取ると、前を拭いた。
「その、パジャマも着替えるので、そのまま後ろ向いていて下さい」
「お、おう」
言われた通り、春輝は後ろを向いていた。
「もう、大丈夫ですよ」
そう言われ、振り返ると、紗良は新しいパジャマに着替えていた。
「これ、洗濯してもらってもいいですか?」
「おう、もちろん」
「食欲はあるか?」
「はい、お腹は、空いたような気がします」
「分かった、雑炊でいい」
「はい」
そう言うと、春輝は雑炊の準備をするために、キッチンへと向かおうとした。
「出来るまで、横になっててね」
「分かってます」
紗良は、再びベッドに横になった。
それを確認して、春輝は、紗良の部屋を出た。
「さてと、」
春輝は、買って来ていた、レトルトの雑炊を温めていた。
「これだけじゃ、忍びないから、アレンジ入れるか」
冷蔵庫にあった、ネギを刻んでいく。
温まった雑炊に、刻んだネギと卵を追加して、味を調えていく。
「うん、こんなもんだな」
一口、味見をして、納得する味になっていることを確認した。
深めのお皿に移し、木で出来たスプーンを添えた。
お盆に乗せると、紗良の部屋へと、向かった。
「さら、出来たぞ」
そう言って、部屋に入ると、紗良は、上半身だけを起こしていた。
「大丈夫か?」
「はい、少し、良くなってきましたから」
「まだ、完全ってわけじゃないだろ? 食べたら薬飲んで寝な」
「はい」
紗良がジッと春輝を見つめた。
「食べないのか?」
「兄さんが、食べさせて、下さい」
頬を赤くしながら言った。
そうだ、これはきっと熱のせいだ。
そうに違いない。
「さ、紗良がそういうなら、分かったよ」
春輝は、スプーンで、一口分すくうと、冷ましてから、紗良の口元まで持って行った。
「熱いから気をつけてな」
「はい、」
口元まで、運ばれた雑炊を口に含む。
「おいしい、です」
「汗かいたと思ってな、塩分多めにしといたよ」
「流石は、私の兄さんです」
紗良は、微笑みを浮かべた。
「良かったよ。ほれ、」
紗良はパクパクと食べ進めていく。
いつもよりは、時間がかかったが、綺麗に完食してくれた。
「美味しかったです」
「それは、何よりだよ。薬、飲みな」
春輝は、薬と水を渡した。
「はい」
紗良は、薬を飲むと、また、ベッドに横になった。
「俺、これだけ片付けてきちゃうから」
「また、戻って来てくれますか?」
「もちろん。どこにも行かないよ」
「はい」
紗良は天井を見て、目を閉じた。
それを確認すると、春輝はお皿にを片付ける為、キッチンへと向かった。
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