第32話 紗良の看病①

 春輝は紗良の部屋に入ると、ベッドのすぐ、横に行った。


「兄さん……」

「おう、戻ったぞ。とりあえず、これ飲め」


 そう言うと、風邪薬と、水を渡した。


「ありがとうございます」


 紗良は受け取ると、薬を水と一緒に飲んだ。


「冷えピタ貼るぞ」

「はい、」


 春輝は、紗良の前髪をどかすと、おでこに冷えピタを貼った。


「冷たい……」

「うん、冷たいよな。マスク要るか?」

「もらいます」


 春輝からマスクを受け取ると、紗良はマスクを付けた。


「スポーツドリンク一本置いておくな。もう一つは、冷蔵庫に入れておくから」

「ありがとうございます」

「気にしなくていい。とりあえず、寝てな」


 そう言って、立ち上がろうとした時、春輝の腕を掴まれた。


「また、一人にするんですか……?」


 トロンとした目でそう、訴えかけられると、不謹慎かもしれないが、凄く可愛いと感じてしまった。


「ごめんな。もう、どこにも行かないから。傍に居るよ」


 そう言うと、紗良の頭をそっと撫でた。


「手、握っていてもいいですか」

「もちろん」


 春輝は、紗良の手を握り、ベッドの横に腰を下ろした。


「傍に居るから。おやすみ」

「はい……」


 力なく頷くと、紗良は目を閉じた。

数分後、紗良は、可愛い寝息をたてていた。


「寝たみたいだな」


 小声でつぶやくと、春輝は紗良の可愛らしい寝顔を眺めていた。


 3時間ほど経過しただろうか、紗良が目を覚ました。


「おはよう」

「本当に、ずっと手を握っていてくれていたんですか?」

「もちろん、約束だからな」

「嬉しいです」


 紗良は微笑んだ。


「汗をかきました。兄さん、背中を拭くのを手伝ってくれませんか?」

「え、でも、それって」


 それは、紗良の裸を見てしまうことを意味していた。


「兄さんに、なら、見られても、いいです……」


 紗良が俯き加減に言った。


「分かった。タオル持ってくるわ」


 春輝は立ち上がり、洗面所へと向かった。

フェイスタオルを絞ったものと、乾いたものを持って、紗良の部屋に戻った。


「あ、あの、それでも、少し恥ずかしいので、出来るだけ見ないでもらえると、嬉しいです」

「わ、わかった」


 紗良は、パジャマのボタンを外していく。

そうして、紗良の綺麗な白い肌が露わになっていく。

ロングの髪を前に持っていき、背中からうなじのラインが綺麗に見える。


「お、お願いします」

「う、うん、背中拭くね」


 春輝は、出来るだけ見ないように気遣いながら、紗良の背中に手を伸ばした。

綺麗に汗を拭きとって行く。

一通り、濡れたタオルでふき取ると、次は、乾いたタオルで拭いた。


「背中は、拭き終わったぞ」

「ありがとう、ございます。前も拭きたいのでタオル貰っても?」

「は、はい」


 春輝は紗良にタオルを渡した。


「あ、あの、後ろ向いてもらっていてもいいですか?」


 紗良が、胸を手で隠し、顔を赤くして言った。

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