第40話 サイン会当日
高校が夏休みに入って、一週間が経過しようとしていた。
今日は、小田霧先生と東條零の合同サイン会の当日だ。
「兄さん、おはようございます」
「ああ、おはよう」
紗良は先に起きて、食パンを焼いていた。
「兄さんのサイン会って今日でしたよね?」
「ああ、そうだよ」
「兄さんも食べます?」
「もらおうかな」
紗良は、春輝にもトーストを作ってくれていた。
「食べ終わったら準備しないとな」
春輝はトーストを咥えながら、コーヒーを啜っていた。
「なんだか、忙しないですね」
「ちょっと、急がないとヤバイ距離でな」
今日のサイン会はヲタクの聖地と呼ばれる、アニメショップの一角だった。
春輝の家から、会場の最寄り駅までは、20分ほどかかる。
「たしかに、ちょっと距離ありますね」
「だろ?」
春輝はトーストを食べ終わると、黒のワイシャツに袖を通した。
そのまま、髪のセットに向かう。
「よし、こんなもんか」
髪のセットも終えると、黒のスーツに着替えた。
「じゃあ、行ってくる」
鞄の中には、書籍と筆記用具、手帳などが入っている。
「いってらっしゃい。気を付けて下さい」
「おう、ありがとう。夕方には帰れると思うけど、遅くなりそうなら連絡するよ」
「はい、分かりました」
紗良に見送られ、紗良は家を出た。
「さて、今日も暑くなるかもな」
駅まで徒歩10分ほどの道のりを歩き、電車に乗り、サイン会場のある駅で降りた。
そのまま、歩いてサイン会場のアニメショップへと向かった。
「おいおい、もう並んでいるのかよ……」
魔法学院の最強賢者の書籍を持った人が、ショップ店員の指示で並んでいた。
「小田霧先生と東條先生のサイン会、最後尾はこちらでーす!」
店員さんが大声で、誘導している。
「バレないように行かないとな」
顔出しはしていないのでバレることはないだろうが、俯き加減で関係者控え室へと向かった。
「あ、小田霧先生お疲れ様です」
「東條くん、お疲れさま。今日は気合入ってるね」
小田霧が春輝の服装をみてそう言った。
小田霧は白のワンピースを着ていた。
「まあ、サイン会ですからね。それより、凄い並んでますね」
「ああ、私もさっき来た時驚いたよ」
小田霧も苦笑いした。
「それだけ人気なんですよ。先生たちの作品は」
担当編集の笹井も到着していた。
「それは、嬉しいですけどね」
「サイン会まではあと30分ほどあるので、先生たちは休んでいて下さい」
「分かりました」
そこから、30分ほど小田霧と次回作の予定などをはなしていたら、時間となった。
「先生方、お願いします」
ショップ店員は呼びに来た。
「「はい」」
春輝と小田霧は席を立つと、ショップ店員と笹井の誘導で、特設されたサイン会場へと入った。
その時、並んでいたファンからは、ざわめきが起こった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます