第39話 映画後の兄妹
二人は、映画館を出て、少し歩いた所にあるカフェに来ていた。
「うーん、コーヒーも飽きてきたから、カフェラテにでもしようかな」
「私は、レモンティーにします」
「はいよ」
注文を終え、ドリンクを受け取ると、適当な席に腰を下ろした。
「にしても、予想以上に良かったな」
春輝は、カフェラテを一口飲んで言った。
「ですね、主人公にまさかあんな過去があるなんて」
「ああ、あそこの展開はびっくりしたな」
「でも、最後は主人公も小説を一本書いて、出版してくれて、良かったです」
「だな。普通に面白かったな」
春輝も仕事柄、小説に関わっているからこそ、分かるものがあった。
「もう一度、書き始めるきっかけを作った、あのヒロイン、凄かったですね」
「うん、良かった。小説版も読んでみようかな」
今度の映画は、小説が原作になっていた。
「兄さん、小説も読みますもんね」
「ああ、小説は嫌いじゃないな」
気づくと、カフェラテは、三分の一ほどまでに減っていた。
「さてと、飲み終わったら帰るか? どっか行きたいとこあれば寄って行くけど」
「そうですね。ヘアアクセサリーを見に行きたいなって思っていたんですが」
「おう、じゃあ、アクセサリー見て帰るか」
「いいんですか?」
紗良は、目を輝かせていた。
「別にいいよ。どうせ、帰ってもやることないし」
「ですね。じゃあ、行きましょう」
紗良に連れられ、ヘアアクセサリーの店まで歩く。
駅と同じ方向なので、帰りも帰りやすいだろう。
「紗良はどんなのがいいんだ?」
「えっと、前髪を止めるピンと、髪をまとめるゴムとシュシュを」
確かに、前髪は邪魔になると、家では前髪を上げていることが多かった。
これには、春輝も同感だ。
「兄さんは、どういうのがいいと思いますか?」
「んー、よく分らんが、これとか可愛いと思うが」
春輝は、桜のモチーフのヘアピン指さした。
「おお、確かにいいですね」
紗良は、それを手に取ってみていた。
「気に入ったなら買ってやるよ」
「いいんですか?」
「うん、別に構わんさ」
春輝は、紗良が気に入ったというアクセを何個か一緒に購入した。
「色々買ってもらってすみません」
「いやいや、紗良のその笑顔が見れるならそれで十分さ」
一つ1000円でその笑顔が引き出せるなら、安いもんだ。
「さて、買い物もしたことだし、帰るか」
「はい! 大満足です!」
二人は、店を出ると、駅に向かって歩いた。
「うん、良かったよ。俺も楽しかった」
「私もです」
駅で電車を待ち、最寄り駅へと揺られて行く。
「晩飯の材料だけ買っていくか」
「はい!」
最寄り駅のスーパーで買い出しを済ませると、並んで自宅までの道のりを歩いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます