第64話 夏休み終了

 気づくと、時計は日付を跨いでいた。

映画を見終わった後、二人ともウトウトしてしまい、少しの間、意識を手放していたようであった。


「寝ちゃったのか……」

「みたいですね」


 変な態勢ね寝てしまったためか、腰や首が痛む。


「ちゃんと寝るか」

「ですね。明日からはまた学校ですし」

「ああ」


 お互いに、風呂を済ませ、歯を磨いたら就寝する。


「おやすみ」

「はい、おやすみなさい」

 

 それぞれ、部屋に入る。

俺は、そのままベッドに倒れ込んだ。



「朝、か……」


 6時半のアラームで目を覚ます。

気づけば、この時間のアラームで起きるのは久しぶりかもしれない。


「起きなきゃな」


 眠い目をこすりながらも、俺は体を起こす。

そのまま、キッチンへと行き朝食の準備をする。

しばらくすると、紗良も起きてきた。

最近は、きちんと自分で起きている。

何なら、俺よりも早い時があるほどである。


「おはよう」

「おはようございます。兄さん」


 朝食をリビングのテーブルに並べるのを手伝ってくれる。

今日の朝食は、トーストと目玉焼きにサラダを付けてみた。

俺は、コーヒーで紗良は相変わらずのオレンジジュースである。


「「いただきます」」


 俺たちは、手を合わせると食べ始める。


「美味しいですね」

「まあ、簡単なもんだけどな」


 こうして、対面で食事を取るのはすっかり、日常と化した。


「着替えなきゃな」

「ですね」


 テレビの右上に表示されている時間は7時半となっていた。

そろそろ着替えた上で、家を出る時間帯だ。


 互いに部屋に戻り、制服へ袖を通す。

およそ、一ヶ月ぶりの制服だ。

着慣れたはずの制服も、一ヶ月着ないと新鮮な感じがする。


 夏のバカみたいに暑い気候も落ち着き、秋服がちょうどいい気温である。


「さて、行きますか」

「はい」


 着替え終わって、家を出ようとした時には、8時過ぎを表示していた。

テレビと電気を消し玄関へと向かう。

これまた、履きなれたはずのローファーを履き、玄関を出る。


「何か、久しぶりだと新鮮だな」

「そうですね」


 二人は微笑んだ。

学校までの道のりを、制服で歩く。

そんな日常も、紗良となら特別なものに変わっているような気がした。


「お二人さん、夏休み明けからお熱いですねぇ……」


 学校に近づいていた頃、これも定番化してきた莉緒の茶化しが入る。


「莉緒、おはよう」

「おっはよー!!」


 朝っぱらから元気なヤツだ。

まあ、こいつに元気が無いと、逆に心配になるレベルだが。


「バーベキュー以来だから、莉緒とも久々だな」

「だねだね。二学期も頑張ろう!」

「おうよ」


 俺は、紗良と莉緒と共に、学校までの道のりを歩く。

二人の美少女を侍らせてる男ということで、痛い視線を浴びつつも、慣れたもんだ。

いや、慣れというのは本当に恐ろしいものである。

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