第72話 妹の膝枕
俺は、兄妹ラブコメの執筆にアニメ関連の題字と仕事に追われていた。
魔法学園の最強賢者のアニメ化がヒットし、そこから、俺への依頼も爆発的に増えた。
今、募集しているのは既に半年ほど先の仕事である。
「兄さん、お疲れのようですね」
執筆が一区切りしたところで、新しい飲み物を取りにリビングへと降りた時、紗良が声をかけてきた。
「ああ、色々立て込んでいてな」
学校から、帰れば執筆、昼休みも執筆、学校に行く前も執筆、そんな生活を送っていた。
睡眠時間を削って書くしかないといった感じである。
「また、これからお仕事するんですか?」
「ああ、じゃないと間に合わないからね」
朝桐さんからは一ヶ月ちょっとで10万字という割とぶっ飛んだ締め切りを課せられている。
「大変……ですね」
「ああ、紗良も遅くならないうちに寝ろよ」
そう言って、俺は飲み物を取ると、自分の部屋に戻ろうとした。
「ちょっと待って下さい!!」
紗良に呼び止められた。
「ん? どうした?」
「そんな兄さん、見ていられません! ここ、使って下さい」
紗良はソファーに座っていた太ももを、ポンポンと叩いた。
「使うって?」
「その、ひ、膝枕してあげます」
紗良は、頬を赤く染めながら恥ずかしそうに言った。
「え、い、いいの?」
俺は、戸惑いながらも紗良に聞いた。
「いいんですよ。ちょっとは休んでください!」
「じゃ、じゃあ、お願いしようかな」
多分、この時は疲れすぎてねじが飛んでいたのかもしれない。
平常心の時では絶対に言えないことであろう。
「ど、どうぞ」
「失礼します」
俺は、ソファーに横になると、頭を紗良の太ももに預けた。
これが、生まれて初めての膝枕だ。
紗良の太ももの感触は柔らかく、得も言われぬものであった。
「兄さん、こんなに隈を作って。倒れたらどうするんですか?」
そう言って、紗良は俺の頭を撫でてくれる。
ヤバイ、これ、癖になりそう。
紗良の匂いと、太ももの感触が俺を落ち着かせてくれる。
膝枕というのはこんなにもいいものなのか。
「あ、ヤバイ……」
「いいですよ。寝ても」
紗良のその声に負け、俺は意識を落とした。
♢
「はっ!?」
俺は、目を覚ました。
「よく寝れましたか? 兄さん」
紗良が優しい微笑みを浮かべて話しかけてくれる。
「俺、どれくらい寝てた?」
「二時間くらいでしょうか」
俺は体を起こした。
その間、紗良はずっと膝枕をしてくれていたのだ。
「足、しびれて無い? 大丈夫?」
「はい、問題ありません。それより、少し元気になりました?」
紗良が少し首をかしげて尋ねてきた。
「うん、凄く元気が出たよ。ありがとうな」
そう言うと、俺は紗良の頭をそっと撫でた。
恐るべし、膝枕パワー。
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