第25話 サイン会の決定

 確かに、春輝のSNSのアカウントは、『魔法学院の最強賢者』の題字を担当してから、爆発的に伸びていた。

ライトノベルの題字を書道家が担当するのは、あまり前例がなかった為、話題性としても十分だったのだろう。


『それで、サイン会出て頂けますか?』

「分かりました。小田霧さんとの合同サイン会になるんですか?」

『ええ、そうです。その辺の打ち合わせもしたいので、一度、出版社の方に来ていただけますか?』

「構いませんが、テストが終わってからでもいいですか? 高校の試験期間で」

『もちろんです。先生は学業を優先させて下さい』

「ありがとうございます」

『はい、では、また連絡します』


 そこまで言うと電話は切れた。


「兄さん、お風呂上がりましたけど……」

「おう、ありがとう」

「お電話ですか?」

「ああ、サイン会に出ないかってさ」

「凄いじゃないですか!!」

 

 まだ、若干湿っている髪を乾かしながら、目を輝かせていた。


「お、おう……ありがとう」

「それで、出るんですか?」

「うん、そのつもりだよ。俺もまだ、詳しくは聞いてないけど」

「私も、サイン貰いに行っちゃっおうかな!」


 紗良がニヤニヤしている。


「小田霧さんのサインが欲しけりゃ、もらってきてやるぞ」

「ええ、いいんですか? 兄さんのサインも一緒ですか?」

「欲しければ」

「欲しいです!!」


 紗良は、顔をグッと近づけてきた。


「おう、じゃあ、今度出版社に行ったときに貰ってきてやるよ」

「ありがとうございます!!」

「面白かったか?」


 紗良には、三巻までを貸していた。


「はい、主人公が強くて、バサバサと敵を倒して行くところは爽快ですし、ヒロインとの恋の行方も気になります」

「お、ということは、二巻までに読んだのか」

「はい、だから、ネタバレは駄目ですよ?」


 紗良にジト目を向けられた。


「ははは、しないよ」


 そう言うと、春輝も風呂にへと向かった。

数十分で風呂から出た。


「俺、メールチェックしに行くわ」

「では、私はもう寝ますね」

「おう、お休み」

「おやすみなさい」


 自分の部屋へと入り、パソコンを開いてメールをチェックする。

担当編集からのメールが一件入っていた。


「サイン会用の看板とポスターに使う題字か」


 内容としては、サイン会場に置く看板と、宣伝用のポスターに使う題字を制作して欲しいとのことだった。

締め切りまではまだ時間があったので、春輝は試験が終わってから、早急に取り掛かることとした。


「さて、寝るか」


 日付は変わり、1時前だった。

紗良もどうやら寝たらしい。

春輝も、ベッドに横になると、布団を被る。

やがて、意識を手放した。

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