第24話 勉強会
二人の勉強会は幕を開けた。
「兄さんは、普段はどうやって勉強してるんですか?」
「うーん、とにかく書くことかな」
「書道家らしい発想ですね」
紗良は笑った。
「紗良は?」
「私も、似たような感じですかね。数学も、問題を解いた分だけ身につきますし」
「おう、じゃあ、いつものように勉強するか。分からない所があったらお互い聞くって感じて」
「はい!」
リビングの机を挟んで座り、黙々とノートに問題を解いて行く。
「紗良、この問題ってどの公式使えばいいんだっけ?」
春輝はテキストを紗良に見せた。
「あ、それは、これを使えばいいんですよ」
紗良が、テキストの前のページに載っていた公式を指さした。
「おう、ありがとう。助かった」
お互いに、分からないところをカバーする目的もあったが、一緒に勉強することで、サボっていないか監視することも出来る。
「疲れたな」
「そうですね」
夕食後から勉強を開始し、時計は22時を指していた。
「少し、休憩するか」
「はい!」
春輝はコーヒーを、紗良は紅茶を啜っていた。
「久々にこんなに集中したな……」
「文字を書く時は集中しないんですか?」
「確かに、集中するけど、それとはまた別って感じだ」
「なるほど、そういうものですか」
「そういうもんだな」
春輝は、マグカップに残っていたコーヒーを飲み干した。
「さて、あと1時間集中するか」
「分かりました!」
そこから、春輝は数学を、紗良は英語を重点的に勉強した。
お互いに、苦手科目はしっかりと抑えておきたいのだ。
「あ、もう23時過ぎてる……」
時計は23時15分を指していた。
「本当ですね」
「紗良の方はどんな感じ?」
「結構、いい感じだと思います。一人でやると、サボってしまうので」
「俺もなんだよな」
二人は、苦笑いを浮かべた。
「よし、今日は風呂入って寝るか」
「そうしましょう」
「先に入ってきていいよ。沸いているはずだから」
「ありがとうございます。では、お先に」
そう言うと、紗良は机の上を片付け、お風呂の方に向かっていく。
春輝も、机の上を片付けた。
自分の分と、紗良の分のマグカップを洗うと、リビングのソファーに身を委ねてボーっとしている。
その時、春輝のスマホが振動した。
「はい、東條ですけ」
『東條先生、今いいですか?』
魔法学院の最強賢者の担当編集者だった。
「いいですけど、アニメ化の公式発表があるなら、言って下さいよ。俺まで公式サイトで知ったじゃないですか」
『すみません、小田霧先生に聞いているかと思いまして』
「まあ、それはいいです。ご用件は?」
『はい、魔法学院の最強賢者のアニメ化に伴い、サイン会が開催されることになったのですが、そのサイン会に先生も参加しては頂きたくおもいまして』
予想もしていなかったサイン会のお誘いだった。
「僕のサインなんて需要あるんですか?」
『何を言っているんですか! 今や、魔法学院の最強賢者と言え、東條零先生の題字がなければ始まらないなんて言われているんですよ』
春輝の題字は、かなりの人気を集めているようだったことを、今知った。
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