第74話 出版に向けて①
時刻はもう、日付が変わろうとしていた。
「これで、よしっと」
俺は、朝桐さんに書き上げた原稿を送信した。
一ヶ月ちょっとで10万字を書き上げた自分をほめてあげたい。
すると、すぐに返信がきた。
『お疲れ様です。原稿確認させていただきます』
そんな感じの文面がメールで来ていた。
そして、今度は出版に向けての打ち合わせをしたいともメールに書かれていた。
俺はすぐに、週末なら空いている旨をメールで送った。
『では、今週末に前と同じ喫茶店でいかがですか』
そう、朝桐から返信があった。
俺としては、特に問題もなかったので、了承をするとベッドに潜り込んだ。
流石にもう限界だ。
目を閉じると、すぐに意識を手放した。
♢
土曜日、打ち合わせの当日となった。
「行ってきます」
俺は、鞄を持つと玄関から紗良に声をかけた。
すると、バタバタっという足音と共に、紗良がリビングから顔を出した。
「兄さん、行ってらっしゃい。気をつけてくださいね」
「分かったよ。行ってきます」
俺は紗良の頭を軽く撫でた。
嬉しそうな表情をする紗良をもっと眺めていたかったが、遅刻してしまうので俺は家を出た。
ピコン
俺のスマホの通知音がなった。
メッセージアプリには朝桐からのメッセージが入っていた。
『早めに着いてしまったので先に入って待っています』
そう送られてきていた。
「了解です。俺も今から行きますので15分ほどで着きます」
返信するとすぐに既読が付き、『了解』と送られてきた。
俺は、少し急ぎ目にに喫茶店までの歩みを進めた。
少し急いだからか、10分ほどで到着した。
「いらっしゃい」
いつも通りのマスターが迎えてくれる。
「待ち合わせなんですけど」
「奥の席ですね」
待ち合わせの旨を伝えるとマスターが教えてくれた。
「ありがとうございます」
俺は、奥の席で一人タブレットに目を落としている朝桐さんを見つけた。
「お待たせしちゃってすみません」
そう言うと、俺は対面の席に腰をおろした。
「あ、お疲れ様。いいのよ。まだ待ち合わせの時間前だから」
朝桐はそう言って微笑んだ。
俺は、マスターにブレンドコーヒーを注文すると、早速打ち合わせの内容へと入って行った。
「じゃあ、まず原稿のことね。流石に文章が得意だけあってまとまっていたわ。面白いと思うわ」
「ありがとうございます」
その時、マスターがコーヒーを静かに運んできてくれた。
「後は、誤字がいくつかあったのと多少の矛盾点かしらね」
「なるほど」
「誤字はある程度私が直したけど良かったかしら?」
そう言って、タブレットを俺に向けてきた。
「ええ、その方が助かります。一応、確認しますけど」
俺としては、作業が少なくなる分にはありがたい。
「あと、こことここ、設定が若干矛盾しているいるから、直しといてくれる?」
「分かりました」
俺は、朝桐が指摘したことをメモに取った。
「それで、ここからも大事なんだけど、表紙のイラストレーターさんね」
お、ついにここまで話が進んだか。
自分の書いたキャラが絵になるのは嬉しいものだと痛感する。
「決まったんですか?」
「東條先生は誰に描いて欲しいとかある?」
朝桐が聞いてきた。
「そうですね。マホガクを描いている方ですかね」
俺の知り合いのイラストレーターさんはその人くらいだったので、俺はそう提案してみた。
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