第79話 ご褒美です!

 俺たちは、店員さんの案内により、店内の席に案内された。

周りを見渡しても、女性が多い。

ちらほら、カップルで来ているような人も居るみたいだが。

まぁ、俺たちも側から見たらそう見えるのだろが。


「お待たせ致しました。お冷やとメニューになります。ご注文がお決まりの頃にお伺いします」


 そう言うと、店員さんはその場を離れた。


「どれにする?」


 店員さんが離れた後、俺たちは2人でメニューを覗き込む。


「そうですね。やっぱり、この定番のやつでしょうか!」


 そう言って、メニューの1番最初のページにある『1番人気』と書かれたものを指差した。

写真を見る限り、ホイップクリームのような物が乗っているだけのシンプルなものだった。

だが、それはそれでなかなか美味しそうなのである。

1番人気なのも頷けるというものだ。


「そうだな。俺もそうするか」

「分かりました!」


 その時、店員さんが声を掛けて来た。

なんていいタイミングなのだろうか。


「ご注文、お決まりになりましたか?」

「この、1番人気なやつを2つお願いします」


 俺は、メニューを指差しながら言った。


「かしこまりました。パンケーキの方、今から焼きますので20分ほどお時間頂きますがよろしいでしょうか?」

「はい、大丈夫です」


 俺は、店員さんの言葉に了承をした。


「お飲み物の方は大丈夫ですか?」


 店員さんがドリンクメニューの方を提示して言った。


「あ、じゃあ俺はアイスコーヒーで」

「私はアイスティーをお願いします」

「かしこまりました」


 注文を終えると店員さんはその場を離れて行った。


「ここ、紗良が行きたかったのか?」


 対面の席で嬉しそうにパンケーキを待っている紗良に聞いた。


「そうですね。それもあります」

「それも?」


 その言い方だと、紗良が行きたかっただけでは無いという意味合いに取れてしまう。


「はい、兄さん、最近頑張り過ぎなくらいには頑張っていたので、そのご褒美です!!」


 紗良は柔和な微笑みを浮かべて言った。

なんてよく出来た妹なのだろか。

ますます、他の男の手には渡してやりたくは無くなる。


「ありがとうな」


 そう言うと、俺は紗良の頭を優しく撫でた。

ここが、人目が多い事は完全に頭からは抜け落ちていたが。


「ですから、ここは私の奢りです! ちゃんと味わって食べて下さい!!」


 紗良が意気込むような表情で、拳を握っている。

いや、可愛いかよ。


「分かったよ」


 ここは何を言っても譲らなそうな雰囲気だ。

紗良には後で何か返すとしよう。


「はい!!」


 紗良は終始幸せそうな表情である。

この笑顔を一生守ってやりたい。

そんな事を考えていた俺の前に、パンケーキが運ばれて来た。

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