第58話 アニメの放送日

 長いようで短い夏休みが終わりに差し掛かろうとしていた。

残りは、一週間と少しだろうか。

紗良と過ごす夏休みは、凄く充実したものだった。


「兄さん、いよいよ今日ですね!」


 紗良は生き生きとしている。


「へっ? 何が?」


 今日は何か特別な日であっただろうか。

俺には全く記憶になかった。


「何って、兄さんの題字してるアニメ、今日が第一話ですよ」

「ああ、そう言えば今日だったのか」


 何か、色々バタバタしていてすっかり忘れていた。


「しっかりしてくださいよ兄さん。一緒に見ましょうね!」


 紗良は微笑んでいた。


「あ、ああ。見ようか」


 確か、夕方くらいに放送の予定だ。

まだ、昼過ぎのため、放送までにはかなり時間がある。


「紗良は、そんなに楽しみなのか?」

「はい! 私、アニメとかあまり見なかったんですが、面白そうでしたから」


 紗良の目は輝いていた。


「おう、ありがとう」


 俺は、紗良の頭をそっと撫でた。

すると、紗良の頬は赤く染まっていた。


「で、では、私は予習してきます」


 そう言うと、紗良は自分の部屋に引っ込んでいった。

恐らく、原作本を読み返すのだろう。

どれだけ楽しみにしているんだよ。


「まあ、嬉しいことではあるがな」

 

 そう呟くと、俺も自分の部屋へと戻って作業を開始させた。


「お、もうこんな時間か」


 ふと、時計を見ると夕方の17時を指していた。


「兄さーん。そろそろですよー」

 

 紗良が俺の部屋の扉を叩いた。


「はいよー。今行くから」


 俺は作業していた手を止めると、部屋を出た。

そのまま、紗良と共にリビングへと向かう。

テレビをつけ、チャンネルをいじる。


「あと、30分くらいか」

「ですね!」


 だいぶ気が早い気がするが、まぁいいだろう。

何となくテレビを眺めていると、放送時間が迫って来た。


「兄さん、いよいよですよ」

「お、おう」


 CMが入った後に、アニメの最初のシーンが流れた。

その後、俺の題字と共にオープニングテーマが流れた。


「おぉー」


 紗良は感したような表情を浮かべていた。


「凄いもんだな……」


 自分の書いた文字がアニメに使われているのは、感慨深いものであった。


「終わりましたね」

「あぁ、凄かった」

 

 30分のアニメはあっという間に幕を下ろした。

当然の事だが、すごく面白い。


 アニメが終わると、俺は自分のS N Sを立ち上げる。


『アニメ、ご覧になって頂けましたか? 自分の題字が使われているのはとても嬉しいものです。次回もお楽しみに!』


 そう、入力すると投稿ボタンを押した。


 すると、すぐに反応が飛んでくる。


『見ました! 題字かっこよかったです!』

『次回も楽しみです』


 そんな感じの反応が多かった。

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