第57話 浅草観光
着物に着替えた二人は、浅草の観光へと赴く。
「兄さん、まずはどこに行くんですか?」
「まずは、浅草寺の方に行くよ」
そう言って、俺は紗良の手を取った。
「へっ!?」
紗良は驚いたような表情をした。
「俺が紗良と手を繋ぎたかったから」
少し、恥ずかしい気持ちもあったが、その衝動が抑えきれなかった。
「喜んで」
紗良は満面の笑みを浮かべていた。
そのまま、二人は浅草寺の方へと向かっていく。
途中、紗良はパシャパシャと写真を撮っていた。
SNSに載せるそうだ。
「もう、正面に見えてくるぞ」
俺がそう言うと、浅草寺が見えてきた。
「おぉ、初めてきましたー」
紗良のテンションが少し上がっていた。
「お参りしていくぞ」
俺は、着物の袖の中から、紗良は持っていた巾着からお賽銭を取り出す。
そのまま、お賽銭をするとその場を離れた。
何せ、人が多い。
「紗良は、他に行きたい所はあるか?」
「そうですね。特に決めてませんでした……」
紗良はそう言うと、俺の手をギュッと握ってきた。
可愛いかよ。
「じゃあ、ちょっとその辺散歩するか」
「はい!」
浅草の光景はいつ見ても嫌いにはなれない。
今日は隣に紗良もいる。
それだけで、特別な感じがする。
一通り、見て回ると、やがて日が暮れてきた。
「そろそろ、夕方になるな。着物、返してくるか」
「そうですね。そうしましょうか」
そろそろ、足も疲れてくる頃だ。
「戻りました」
俺たちは、美里さんの元に戻った。
「おかえり。どうだった?」
「なかなか新鮮で楽しかったですよ」
「紗良ちゃんは?」
美咲さんは紗良に話を振った。
「着物、ほぼ初めてだったので楽しかったです。ちょっと、足が疲れましたが」
慣れないものを着て歩くというのは疲れるものだ。
「そうだよね。最初は皆そう言うわ」
そう言って美咲さんは微笑んでいた。
「じゃあ、俺たち、着替えてもいいですか?」
「もちろんよ。紗良ちゃんは手伝うわね」
「ありがとうございます」
紗良と、美里さんは奥の部屋へと引っ込んでいく。
「さて、更衣室借りますね」
「はーい」
俺も、有紗に一声かけると、更衣室へと入った。
着るときと逆の手順で、着物を脱いでいく。
やはり、いくら慣れているとはいえ、多少は疲れるものである。
「これで、よしっと」
俺は、着物から普段着に着替え終わった。
綺麗に着物を畳むと、有紗に渡した。
「これ、また預かっといてくれ」
「わかりました」
有紗は俺から着物を受け取った。
その後、俺は来客用のソファーに腰を下ろし、紗良が着替え終わるのを待っていた。
「お待たせしました」
しばらく待つと、紗良が着替え終わって戻ってきた。
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