第9話 ご飯の帰り道
焼肉屋を出て、階段を降り切った所で紗良が待っていた。
「お待たせ」
「いえ、ごちそうさまでした」
「いえいえ。はい、これ。ガム貰ったから」
そう言って、俺は貰ったガムを手渡した。
「あ、ありがとうございます」
紗良は、ガムの包み紙を開くと、口にガムを放り込んだ。
「さて、帰ろうぜ」
「はい!」
二人は、並んで家までの道のりを歩き始めた。
「そういえば、まだ、連絡先交換してなかったよな?」
「そういえばそうですね」
「まあ、このところずっと一緒に居たからな」
俺たちは、ほとんど一緒に居たし、同じ家に住んでいる為、今まで連絡先を交換しなくても、さほど不便は無かったのだ。
「家族だし、交換しとくか」
「そうですね!」
歩きながらポケットからスマホを取り出し、メッセージアプリを立ち上げた。
「ほれ、これ読み込んでくれ」
メッセージアプリのQRコードを画面に表示させた。
「はい!」
紗良もメッセージアプリを立ち上げ、俺の表示したQRコードを読み込んだ。
『新しい友達』の欄に、紗良の名前が表示された。
「これで合ってる?」
「はい。その、紗良ってのが私です」
友達と撮ったと思われる、プリクラがアイコンになっていた。
「兄さんのはこれですか?」
紗良がスマホの画面をこっちに向けてきた。
「そうそう、それが俺」
春輝は、自分の書道の作品をアイコンにしていた。
「やっぱり、兄さんって、字上手いんですね」
「ああ、まあ、これでも書道部の部長だからな」
ピコン
紗良から、『よろしくお願いいたします』という、スタンプが送られてきた。
俺も、スタンプで返すと、スマホをポケットに仕舞った。
そこから、数分歩いて、家の前に到着する。
ポケットから鍵を取り出すと、開錠し、紗良を先に家の中に入れた。
「焼肉の匂い付いたよな。洗濯するか」
「それがいいですね。私、部屋着に着替えてきます」
「おう、それなら、そのまま風呂入れよ。沸かしてくから」
「ありがとうございます」
俺は、着ていたシャツを脱ぐと、洗濯機に放り込んだ。
そのまま、風呂を溜める。
20分ほどで、風呂が溜まったことを知らせてくれた。
「お、風呂沸いたか」
スマホと財布をリビングの机の上に置き、階段を見上げると、ちょうど紗良が降りてくるところだった。
「さっき、風呂が沸いたから、入ってきな。バスタオルも用意しといたから」
「ありがとうございます。じゃあ、お先に」
「おう」
紗良も、さっきまで着ていた服を、洗濯機に入れると、脱衣所の方に入って行った。
「ふう、これで紗良が出るまでは、まだ時間あるな」
リビングのソファーに腰を下ろすと、何となくテレビを付けた。
ボーっとテレビを30分ほど眺めていると、紗良が風呂から上がった音が聞こえてきた。
「兄さん、お風呂あがりましたよ」
「おう、そうか……」
そう言って振り返ると、バスタオル1枚姿の紗良が立っていた。
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