第4話 兄妹初登校

 俺と紗良は二人並んで学校までの道のりを歩く。

家から学校までは歩いても20分程の距離にあった。


「誰かと登校するのなんて久々だよ」

「ふふふ、私もです」


 そう言って紗良は微笑んだ。


 何て可愛いのだろうか。紗良に彼氏が出来ようもんなら俺はどうなってしまうのだろうか。

これが娘を嫁に出す親父の気持ちか


 そんなくだらない事を考えながら、他愛もない話をしているうちに学校が近づいてきた。

自然と周りの視線が春輝と紗良に集まる。


「何か、私たち見られてませんか?」

「ああ、そうだな」


 理由は分かっている。

何を隠そう、紗良は超絶美少女なのだ。

俺も学校でそこそこの有名人。

書道部の部長であり、コンクールでは上位賞入選を数多く成し遂げてきた。


「何だ、あの子、めちゃ可愛くね?」

「おう、あんな子うちに居たか?」

「転校生かもな。って隣に居るの東條じゃん」

「東條の彼女なら手出しできねぇよなぁ」


 そんな周りの男子たちの声が聞こえてくる。


「おっはよー!」


 いきなり後ろから肩を叩かれた。


「何だ、莉緒か。脅かすなよ」


 根本莉緒、同じクラスで書道部の副部長だ。

元気だけが取り柄のようなヤツだが、クラスでの人気も高い。


「何だって何よ。こんな美少女が朝から話しかけてあげているのにって、誰? その子、めっちゃ可愛い」

「お前が美少女かどうかは置いておいて、こいつは紗良、俺の妹だ」

「兄さん……?」


 紗良は俺に疑問の目を向けてきた。


「ああ、すまん。こいつは根本莉緒。同じクラスで書道部の副部長だ」

「よろしくね」

「東條紗良です。今日、転校してきました」


 紗良はペコっと頭を下げた。


 それからは三人で学校まで歩いた。

美少女二人に挟まれて登校している俺への視線はめちゃくちゃ痛かった。


「では兄さん、私はまず職員室に行くように言われてますので」

「おう、分かった。また後でな」


 下駄箱の前で紗良と別れると莉緒と二人教室へと向かった。


「春輝っていつ妹出来たの?」

「ああ、親父が再婚してな、母さんの連れ子なんよ」

「なるほど。あんな美少女が妹なんて良かったわね」

「まぁな」


 そんな会話を終えると春輝は自分の席へ着いた。

そして、朝のホームルームが始まる。


「えー、今日は転校生が居るから紹介するぞー」


 まさかとは思った。

が、そのまさかだった。


「入ってくれー」


 教師の指示で教室の扉が開き、紗良の姿があった。

紗良とは誕生日の関係で妹という事になるが、学年は一緒だということを忘れていた。


『東條紗良』


 教師はそう黒板に書いた。


「初めまして、東條紗良と申します」


 その言葉に教室内は騒ついた。

何人かは俺の方に視線を向けている。


「気付いたヤツも居るだろうが、紗良さんは東條の妹だ。皆んな仲良くするように」


 その言葉で教室は更に騒ついた。

まあ、いずれバレることだからいいが。


「席はそうだなぁ。莉緒の後ろにしよう」

「はい。分かりました」


 紗良は指示された席へ着いた。

俺の方に微笑みを浮かべながら。


「はぁ。俺の高校生活はどうなることやらだな」


 そんな事を思いながら窓の外を眺めた。

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