第54話 もんじゃ焼き

 俺と紗良が席に着くと、直ぐに店長さんがやって来た。


「春輝さん、いつもご利用ありがとうございます。本日のおすすめメニューをおもちしました」


 ここは、俺がよく仕事で使っているお店で、親父の友人が営んでいる店なのだ。


「わざわざありがとうございます。宮田さんもお元気そうで」

「おかげ様で、うちも元気やってます。明にもよろしく伝えといてください」


 俺は、店長の宮田さんからメニューを受け取った。


「はい、親父にもたまには帰ってくるように伝えておきます」

「はい、それでは、どうぞごゆっくり」


 そう言って頭を下げると、厨房の方へ戻って行った。


「兄さんのお知り合いさんなんですか?」

「ああ、ここは親父の高校の時の同級生がやっている店なんだよ」

「そうなんですね! 兄さんは顔が広いです!」

「ありがとうよ」


 ほとんどは、親父のつてか、出版社関係のコネしか持ち合わせては居ないが。


「さて、何にするかい?」


 紗良にメニューを見せた。


「どれがいいでしょう?」


 紗良は悩んでいる様子だった。


「今日のおすすめはこれって言ってたな」


 俺は、宮田さんがおすすめしていた、たこもんじゃを指差した。


「じゃあ、それにしましょう!」

「おう、他にはいいか? 飲み物とか?」

「私は烏龍茶にします」

「ん、了解」


 俺は店員さんを呼んだ。


「はい、お待たせ致しました」

「たこもんじゃと、烏龍茶を2つお願いします」

「かしこまりました。少々お待ち下さいね」


 注文を取ると、店員さんは厨房の方へ戻って行った。


「ここも、混んでるんですね」


 紗良が辺りを見回して言った。


「ああ、もう昼時だし、ここの評価高いからね」


 俺はスマホの画面に『もんじゃみやた』の評価を表情した。


「本当だ……」

「だから、予約しないと入れない事が多いんだよね」


 評価は星3.2の高評価のお店なのである。


「わざわざ予約取ってくれたんですね」

「せっかく浅草行くなら、ここに連れて来たかったからね」

「ありがとうございます」


 その時、注文の品が運ばれて来た。


「こちら、たこもんじゃと烏龍茶になります。紙エプロンはお使いになられますか?」


 店員さんが紙エプロンの有無を聞いてくれる。


「私は、お願いします」

「俺は大丈夫です」


 白シャツで来た事を若干、後悔したが、まぁ大丈夫だろう。


「かしこまりました。ご用意します」


 そう言って、店員さんは紗良の分の紙エプロンを用意してくれた。


「こちら、お使い下さい」

「ありがとうございます」


 紗良は紙エプロンを受け取った。


「こちら、お焼きしましょうか?」

「あ、じゃあ、お願いします」


 ここは、頼めば焼いてくれるお店なのだ。

俺がやるより、プロがやった方がいいだろう。


「かしこまりました」


 そう言うと、店員さんは手際よく、もんじゃを焼いていく。

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