心と身体、男と女。曖昧な性の僕から生まれた娘
性分化疾患。古くは両性具有などとも呼ばれていた症例。それが僕。
僕は男と女、どちらの性なのだろう、どちらの性を選べば良いのだろうか。
周囲に知られるのを恐れながら大学生活を送る僕に、大学病院の医師である兄から産婦人科医の早乙女に引き合わされた。
彼女から下された命令は一つ。
僕の精子と卵子、それらを人工授精させ、僕自身が妊娠し出産すること。
禁忌と呼ぶのもおぞましいその研究に、僕は抗うことを許されなかった。
僕は、父と母、どちらの性として生まれてくる子を愛してあげれば良いのだろうか。
――ご注意――
本作における世界ではメディアをはじめ、様々な情報に偏った部分が含まれております。これはあくまでも「一つの可能性、知識、人々の思考」などを採用したものとなっており、絶対的な正しさとして描くものではありません。それらは物語が続くと共に過激な登場人物の言動や展開に繋がっていき、特に性分化疾患や身体障碍に対し非常に差別的なものが含まれるようになります。これは本作を描く上でどうしても欠かすことのできない、物語の大きな柱となっています。主人公は悪意に翻弄されながらも、やがて向き合うようになっていきます。
本作をお読みになって下さる方々へ。
本作を読み進める途中でご気分を害されたり、作中の登場人物や作者への怒りを感じたりなさるかもしれません。
ですが、批判を承知の上でこれだけは前もって述べさせてください。作者自身には、特定の方々の心を傷つけ、現実での差別を助長する意図は一切ありません。(ネタバレになりますので詳細を伏せさせていただきますが)本作の主人公が最後にたどり着く答え。それが今回の題材として取り上げさせていただく上での、作者なりの精一杯の誠意であるつもりです。
何卒、お願い申し上げます。