第7話 初戦闘
村の北はずれで、山林の多いところ。ここに山賊たちはいました。
計3名程度です。彼ら山賊は荒くれ者。凶悪そうな面構えをしています。
山賊たちは、ひとりの女性を囲むように立っています。
女性は斧を振り回し、周りの山賊を威嚇しています。
おそらく、あの人がジョゼットさんでしょう。
女1人で、3名の山賊を足止めするなんて、さすがです。しかし、どこまでもつかわかりません。
私たちは、岩陰に隠れ、出るタイミングをはかっています。
「クリム。今すぐにでもジョゼットを助けたいんだけど、何か策があるの?」
「このまま飛び出していったほうが、手っ取り早いぜ」
シャロさんもブラウンさんも、今にも岩陰から飛び出さんとしています。
「待ってください。こういうときこそ、冷静に行動すべきです。
ハンナさん。弓を扱えますね?」
「ええ。私は狩人をしていて、弓を扱えるわ」
ハンナさんはうなずきます。
「では、山賊の誰かひとりに、まず矢を射てください。気づかれないようにそっとですよ」
「うん…わかったわ」
「それで、残りの山賊2人が動揺したところを、シャロさんとブラウンさんで一気にたたみかけます」
「なるほど、わかった」
こうして指示を出したのですが、私自身もこういう指示は初めてで、どきどきしています。
ハンナさんは、木の陰に隠れ、弓をかまえます。矢は山賊の1人を狙っています。
当たるでしょうか。こればかりは、ハンナさんを信じるしかありません。
「はっ!」
ハンナさんの矢が飛びます。山賊の1人に命中。「ぐはっ」という声を出し、倒れます。
ブラウンさんとシャロさんが、お互いの顔を見合って、うなずきます。突撃の合図です。
「それ! 突撃だ!」
ブラウンさんとシャロさんは、岩陰から飛び出し、残り2人の山賊に向かって、突撃します。
シャロさんは、槍でまず山賊の剣を払い、槍の柄を山賊の顔にたたきつけます。
山賊はもんどりうって倒れます。
ブラウンさんは、もうひとりの山賊と、つばぜりあいを繰り広げています。
斧と斧がぶつかりあっています。
ぶつかりあいで、勝ったほうの斧が、相手をざっくり傷つけるでしょう。
どっちが勝つでしょうか。ブラウンさんの筋肉もなかなかのものですが、山賊のほうも負けていません。
…つばぜり合いの決着がつくまえに、ジョゼットさんの斧が、山賊の背中を傷つけました。
勝負は、自警団側の完全勝利に終わりました。
「ありがとうよ。助かったよ、みんな」
ジョゼットさんは、駆けつけたみんなにお礼を言います。
ジョゼットさんの腕や脚をよく見ると、けっこうキズが多いです。
戦闘で負傷したのかもしれません。
「…おかしいですね。なんだか変です」
私は言い知れぬ違和感を感じました。
先ほど3人の山賊を倒したわけですが、妙な感じがしたのです。
「どうしたの、クリム」
シャロさんがたずねます。私は答えました。
「山賊たちはなぜ3人で行動していたのでしょう?
旅人1人を、3人で襲うならわかります。
でも、1つの村を襲うために――しかも自警団までついてる村を、たった3人で襲うつもりだったのでしょうか」
「それもそうね。3人で村を襲うのは無理よ。
まあ、小銭稼ぎで家を1軒だけ襲うつもりだったんじゃない?」
「うーん、そうとも考えられますが」
山賊との戦闘には勝利したのに、このもやもやが晴れない気分はなんでしょう。嫌な予感がします。
そしてこの嫌な予感は、的中してしまうのです。
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