第33話 再発

「ヘーゼル隊長! 後ろから敵が!」


自警団員の一人が、悲痛な声をあげる。

振り向くと、そこには、斧や弓で武装した山賊たちが、目で見えるだけでも

十数名ほどいた。


まずい。

正門の敵戦力が、城の中心部に押し寄せてきたのだろう。


前方には、鎧で身を固めた敵。

後方には、大勢の敵。


囲まれ、逃げられない。戦力差もある。

万事休すだ。


この事態に、クリムが第一声をあげる。


「シャロさん! 槍で後方の敵を遠ざけてください!

 ヘーゼルさんはシャロさんの援護を!

 ノエルさんは……前方の人たちを足止めしてください!

 残りの人は、後方から弓で!」


クリムの指示に、ヘーゼルがうなずく。


「よし、みんな、そのとおりに動け!」


ヘーゼルから命令が下る。

鎧相手に有効なダメージを与えられるのは、俺の棍棒くらいだろう。

妥当な指示だったように思う。

だが、相手は3人。俺はどこまで耐えられるか……。


俺は棍棒を構えなおすと、眼前の3体をにらみつけた。

ガデニアと、その部下2名。

どいつもこいつも、重たそうな鎧を身に着けてやがる。

棍棒で殴って、脳を揺らせば、少しはダメージを与えられるかもしれない。

だが、数で負けてるので、容易に飛び込むことはできない。

囲まれてボコられたら終わりだ。


突然、ガデニアが口を開いた。


「勝負あったな。

 俺たちに対抗できる奴が、たった一人しかいないようじゃ、

 俺たちの勝利は決まりだ」


勝利宣言をしだした。


ガデニアは、うしろにいる、複数の女子供に声をかけた。


「念のため、お前たちは、安全な場所に避難しろ」


ガデニアの背後に控えている、女子供は、そろそろと避難を始める。

この女子供は、いったい何者なのだろう。

付近の村からさらってきたのだろうか。


「しまった! 流れ矢が!」


うしろから大声が聞こえた。


流れ矢だと!? 当たるとまずい!

俺は、流れ矢を回避するために、身を低くした。


すると、突然、女性の悲鳴があがった。


どうした。何が起きた。

俺は、衝撃的な光景に、目を丸く見開いた。


「あ……あ……」


女子供の何名かが、床に倒れている。

流れ矢が、命中したと思われる。

動かなくなった女性の体、泣き叫ぶ子供。


それを見て、俺の心臓の音がドクンと鳴る。

血塗られた記憶が、よみがえる。

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