第15話 盗賊妹の失踪

「ステラが消えた」


自宅に戻ったとき、

シャロが大慌てで俺に投げかけてきた。

俺とクリムも驚いて探し回った。


が、ステラは見つからない。

どこに行ったのだろうか。


そして、ステラは、夕方になっても帰ってこなかった。


いよいよ嫌な予感がしてきた。

ステラの奴、まさか……。

勝手に、山賊の根城に忍び込んでいるのではないだろうか。


「ステラさん、どこに行ったんでしょうね……。

 こんな夜遅くなっても帰ってこないなんて」


クリムは不安げな表情を浮かべる。


「心当たりならある。

 たぶん、山賊の根城に向かったんだろう。

 あいつ、さっきの会議でも、自信満々だったからな」


ステラは、会議のとき、自ら、斥候を名乗り出た。

が、却下された。そして、怒りながらその場を出ていった。

自宅にも戻らない。

ステラのその後のことは、容易に想像がつく。


「もう夜になってしまいました。

 今から外に出るのは危険でしょう。

 ステラさんの捜索は明日に……」


「そうだな。夜の山は危険だ。

 ステラが無事でいることを祈ろう」


その日の夜は、あまり寝心地はよくなかった。


ステラが怒って家出するのは、実は、以前にもあったことだった。

しかし、たった数時間の家出だった。

お腹を空かせて戻ってくるからだ。

ふてくされながら、シャロの作った料理を食べるステラの姿は、

今でも脳裏に焼き付いている。


だが、今回は違う。

自分の妹が、危険な場所に潜り込んでいったかもしれない。

今度こそ帰ってこないかもしれない。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る