第50話 伯爵邸の戦い

俺とクリムは作戦を立てて、ミスティの身の安全を最優先に考え、

行動することにした。


俺は、クリムの助言を受け、下記のとおり指示を出した。


ノエル → 全員への指示

ミスティ → 負傷者の治療


クリム → ノエルの横で助言

デニス → ノエルの横で荷物持ち


ステラ → 奪われた金品の奪回

シャルロット → ミスティ護衛、警備兵の援護


ヘーゼル → ミスティ護衛、警備兵の援護

ザッハ → ミスティ護衛、警備兵の援護

リッター → ミスティ護衛、警備兵の援護

リンツ → ミスティ護衛、警備兵の援護



シャルロット(以下シャロ)は、「警備兵の援護」という役割に異を唱えた。


「あの……『警備兵の援護』って、どういうことですか?

 ……別にやりたくないわけじゃないけど、

 私たちってもともとはミスティの護衛が仕事ですよね。

 警備兵の援護する余裕ありますか?」


リンツが答える。


「モンドアー伯爵から要請がありました。

 ミスティ様の護衛の支障にならない範囲で、警備兵の協力もしてほしいと。

 相応の謝礼は出すとも言われております。

 シャルロット殿、どうかご理解いただきたい」


「リンツさん、それはわかったけど……。

 義賊団の戦力はどれくらいですか?

 あまり数が多いと、ミスティの護衛だけで精一杯かも」


「侵入した義賊団は30人超はいるようです。

 うち、ロシェは別行動で、伯爵を狙撃予定。

 ザムと配下の歩兵が25名。金品を狙う盗賊が5名ほど」


「多い……ですね。

 ザム配下の歩兵と、盗賊の違いは何ですか」


「ザム配下の歩兵は、

 警備兵や館内の人間に危害を加えたりする、攻撃的な役割です。

 それと比べ、盗賊は、義賊団に所属しておりますが、

 主な目的は、館内の金品を奪い、逃走することです」


「人間に危害を加えるか、そうでないかの違いなんですね」


「そうです。

 ザムとその配下の歩兵には、粗暴な者が多く、好戦的です。

 幸い、敵の歩兵は剣装備が大半。

 シャルロット殿は槍が得意ですよね?

 槍でけん制すれば、剣歩兵とは楽に戦えるはずです」


「槍はリーチが長いから、剣で攻撃される前に圧倒できますね」


「そうです。

 ですが、敵のリーダーであるザムは、槍を装備しているので

 そこだけは注意が必要です」


「ええ、気をつけるわ……」


「他に質問がある方は?」


「僕からも質問していい?」


ステラが手を挙げた。


「僕の役割に『奪われた金品の奪回』ってあるんだけど……何?」


「すでに盗賊は館内を荒らしまわり、金品を盗んでおります。

 ですが、盗賊が館から逃走するには、多少の時間がかかります。

 その間に、できるかぎりの金品を奪い返してほしいのです。

 これは伯爵からの要請です。

 奪回した金品は、私たちがもらってもよいとのことです。

 ステラさんは、素早く、手際がいい。

 金品を奪い返す役割としては最適だと私は考えます」


「うわぁ、すごい褒められてる…気がする」


「ほめてるんです」


シャロとステラは、リンツの説明に納得してくれたようだった。


「ステラちゃんだけで行動させるのは危ないんじゃないか?

 僕も金品の奪回には協力するよ。盗賊は5名くらいいるんだろう?

 ステラちゃんだけじゃ手が足りないよ」


槍騎士ザッハが名乗り出た。

軍師クリムは、その申し出に、困ったような反応を見せる。


「ステラさんの腕前なら、1名でも大丈夫かと思っていたのですが……。

 ノエルさん、リンツさん、どうしますか?

 ザッハさんがこの場から抜けたら、

 ミスティさんの護衛が一人減りますよ」


「ザッハ君は槍を使えるから、盗賊を相手にするより、

 義賊団の剣歩兵を相手にしたほうがいいです。

 槍は、剣を持った相手には強いですからね。

 ミスティ公女の護衛をしつつ、警備兵の援護に徹してください」

 

「そのかわり、ステラさんの支援には、ヘーゼルを任命しましょう。

 ノエル殿。

 ステラさんとヘーゼル君に、盗賊からの金品奪回をお願いしたい。

 傭兵団長として了承をいただけますか」


「ああ、了承する。

 ところで、俺はここにいればいいのか?

 ミスティのいる部屋の周辺に」


「はい。傭兵団長は、全員への指揮を行う立場です。

 あまり持ち場を離れないようお願いします。

 もちろん、手が足りなければ、ノエル殿も手を貸す必要がありますが、

 今はその必要はないでしょう」


「わかった。みんな、無事に乗り切ろう」


「ちょっと待った!」


荷物持ちのデニスが俺に声をかける。今度はなんだ。

俺は、デニスに顔を向けた。


「ノエル。

 今回は、みんなが分散して行動するんだから、

 回復薬を各自に持たせたほうがいいよ。

 特にステラとヘーゼルは、単独行動するんだから、

 回復薬は多めに持たせたほうがいいね。

 怪我しても、ミスティ公女の側には戻れないんだからさ」


「それもそうだな。各自に回復薬を持たせよう。

 デニス、みんなに回復薬を配ってくれ」


「ああ、任せてくれたまえ!」


こうして、各自、様々な準備を済ませ、配置へとついていった。

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