第22話 不穏な動き

俺たちは、一旦、村に戻った。


先ほどの遭遇戦で山賊たちが警戒モードに入っているだろうし、

ステラからも、山賊の城の情報について、色々聞きだしたし、

しばらく偵察行為も必要はないだろうと判断した。


村に戻ったあと、

シャロは、農作業や自警団のことで、外出。

クリムとステラは、山賊たちのことで別室で会議中。

俺とミスティは、ゆっくりくつろいでいた。


しばらく、お互いに無言でいたが、ミスティが口を開いた。


「あの……こんなことを言うのもなんですが、

 私がいると、村に迷惑がかかるかもしれません」


「ん? どうしてそんなことを言うんだ」


「私は、理由はわからないのですが、

 山賊たちにずいぶん丁寧に扱われました。

 監禁された部屋も、割と綺麗な場所でした。

 裏を返せば、それだけ重要に思われている可能性があります」


「なるほど……つまり、山賊が、ミスティを奪い返しにくると」


「そうです。村が襲われるかもしれません」


「マジか……」


俺は愕然とした。また山賊と戦うことになるのか。

ミスティを守るために。

だからと言って、ミスティを追い出すなんてことは

もちろんできない。ステラに殺されてしまうだろう。

俺だって、感情的に言えば、それはしたくない。


「とりあえず、安易に外出しないほうがいいだろうな」


「私も、そう思います」


「俺も、3日間、外に出ないことがある。

 一緒に引きこもらないか」


「えぇ……。困惑します。

 散歩くらいはさせてくださいよ」


ミスティは、かなり”引いた”表情で、俺のことを見る。

しまった。嫌われてしまっただろうか。

うう……。俺の右腕が痛み始めてきた。


「散歩くらいは大丈夫さ。

 それに、自警団の人たちが、村の周りを監視しているから、

 山賊は、おいそれと入ってこれないよ。

 ……たぶん」


「それは良かったです」


その後、村の周囲に、不審な人間がいたと連絡があった。

最初は、「旅人」か「商人」であるとみられたが、

声をかけようとすると、すぐに逃げてしまったという。

それは、1名ではない。複数人もいたらしい。

不穏な何かが、俺たちの周りを侵食しようとしていた……。

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